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★ 夢の少女


ここは太平洋に浮かぶ無人島。
滅多に人が立ち寄ることはない。

台風で難破した漁船を救助するため東京からはるか離れた洋上に 向かい、無事乗組員全員を助けたパーマン達4人は、とりあえず 近くを通りかかったタンカーにみんなを降ろして、帰途についていた。

『ウヘ~、疲れた~。』
『ほんとほんと。』
『そうでんなー。』

暴風雨の中遠路はるばる飛んできて必死に救助活動をしたために みんなクタクタ。こんな時近くをジェット機が通りかかれば ただ乗りできるのだが、この台風ではその望みはない。

『あ、みなさん、あの島で一休みというのはどないでっしゃろ』
『さんせい~』

ふと小さな島を見つけたパーマン達はここでしばらく休んでいくことに。 みんな声をだすのも億劫なくらい疲れ切っている。
しかし大阪で事業を手がける超多忙のパーやんはそんなにゆっくりしている わけにはいかない。ブービーも隣の飼い犬に毎晩空の散歩をさせてあげる ために、帰らなければならない。2号と4号は少し休んだだけで果敢にも 東京と大阪に向かって飛び立っていった。

残されたのは1号と3号。
こんな中で帰っていく2人に感心しながらも、島に生える巨大な ヒノキの木の根元で正体なく眠ってしまった。ここが風雨をしのぐのに 一番都合が良さそうだったからだ。

実はこの大木、樹齢2000年はゆうに越えるというもので、 人の心に入り込む超能力を持つ。ただし夢の中だけで。。。

・・・・・

『あれ、ここはどこだっけ。たしか仕事の帰りに無人島で一休みしていた はずだけど。』

気がついた1号はあたりを見回す。
もう台風が去ったのか、いい天気。そういえばパー子は?

と、海の方を見ると、ひとりの少女が泳いでいる。何も身につけずに。。。

『な、なんだなんだ!』

意外に恥ずかしがり屋のミツ夫は、つい目をそらす。
と、なんと自分も素っ裸であることに気がつく。
なんとマスクとマントもないではないか!

『うわあ、なんだなんだ!服はどこだあ。』

パニック状態のミツ夫。何か体を隠すものはないかと見回すが、あいにくあたりは一 面の砂浜で、海にはいらなければ体を隠せない。ミツ夫はカナヅチである。一方、パー 子の方は・・・

『あら、私いつの間に泳いでいたのかしら。』

気がついたら泳いでいたという状況は誰にだって理解しがたいものである。

『たしか救助活動の帰りに無人島で休憩したはずだけど、、、とにかく陸に上がらな くちゃ。』

泳ぎの上手なパー子は難なく海岸までたどり着くと、そこに見覚えのある少年を見つ け、少し安心する。

『あら、ミツ夫さんじゃないの。でもどうして裸なの?』

パー子がミツ夫の裸を見ても動じないことは、すでに証明済みである(シンエイ動画 アニメ『なんでもパータッチ』より)。

『うわっ。こっちを見るな~。そ、そういう君こそ裸だぞ~。し、しかも君、もしか して星野スミレちゃんじゃない!』

そう言われてパー子ははじめて自分も素っ裸で、しかもマスクとマントすらなくなっ ていることに気がついた。さすがに事の重大さを理解したスミレは頭の中が真っ白に なる。

『これは、どういうことかしら。』

でも、ここにいるのがどうやらミツ夫一人だけらしいと思えるので、大変だという気 持ちよりも、なんだかウキウキする気持ちが勝ってきた。自分が裸だということも、 他の人の前ならば間違いなく恐怖をおぼえるのだろうが、ミツ夫だけならば不思議と あまり恥ずかしくない。そんな自分に気がついて、

『私って案外大胆なのかしら。それともやっぱりミツ夫さんだけは特別なのかな?』

この独り言は、動揺しているミツ夫には聞こえていない。
恥ずかしがって向こうの方を向いたままのミツ夫の方を見て

『とにかくまず体を隠せるものを探しましょ。』

こういう状況ではスミレはかえって普段よりも生き生きとして活動的になる。完全に 主導権を握り、ミツ夫の手を引っ張って遠くに見える木立の方へと歩き出す。ミツ夫 は、いつだったかこれと似たような体験をした記憶がある。でも、あのときは相手が スミレちゃんじゃなくパー子だったはずだ。そういえばどうしてここにスミレちゃん が・・・?それにしてもあのスミレちゃんと裸で手をつないでるなんて。。。目をそ らそうとはしているが、どうしても時々ちらりと視界の中にスミレちゃんの姿が飛び 込んでくる。すらっと伸びた足と、ふっくらとした腰のあたり、そして意外と膨らみ の発達した胸。不思議といやらしい気持ちは涌いてこない。こんな事には疎いミツ夫 にも、スミレちゃんがこれまで会ったどの女性よりも、・・・あのミッちゃんも含め て・・・はるかに美しいということを実感する。

『ちょうどここに大きな葉っぱがあるわ。これをこうやって組み合わせると、ほら、 簡単だけど服になるでしょ。これ、ミツ夫さん着なさいよ』

といいながら、スミレは今度は自分の服を器用に作る。

『こうしていると、私たちまるでアダムとイブのようね!』

アダムとイブはいわば人類最初の夫婦である。が、ミツ夫はその言葉の意味には気が つかない。一方スミレの方はすこしはしゃぎ気味。とにかくまがりなりにも服を着た という安心感からか、ミツ夫も少しずつ平静を取り戻してきた。それにしても、離れ 小島でなぜかスーパーアイドルのスミレちゃんと一緒とは。

『ねえ、スミレちゃん、ひとつ聞いていい?』
『なあに?』

テレビで見るスミレちゃんもきれいだが、こうして間近で見ると、なんだか普通の女 性とは質の異なるものがある。形容しがたい美しさなのだが、不思議なことにずっと 前からのごく親しい友人のような懐かしい感じも受ける。これはどうしたことだろう。

『どうしてこんなところにいるの?実はぼくもなんだか良く思い出せないんだけど。』

パーマンの素顔は誰にも明かせないことになっているので、ミツ夫も話をぼかさざる を得ない。理由は違うが、自分のことを言えないのはスミレも同じ。

『私もよくわからないの。でも、悩んでいても仕方ないし、せっかくだから食料探し を兼ねて島の探検をしない?』
『いいね。』

ミツ夫も気持ちの切り替えは早いほうだ。それにしても相変わらずスミレがミツ夫を 引っ張って行く。どうもこのカップルは姉さん女房タイプのようだ。

(スミレちゃんって案外活動的なんだなあ)

『え?何か言った、ミツ夫さん。』
『い、いや、べつに。』

しばらく楽しいおしゃべりをするうちに、1本の巨大なヒノキの木の前に出た。

『あ、あれ、この木、たしか。。。』
『見覚えがあるの?ミツ夫さん?』
『い、いや、すごく大きな木だと思ってね。』

スミレも、たしかさっきまでここで1号と一緒に休んでいたような気がする。 なんだかますますわけがわからなくなってきた。と思ったら2人ともどっと 疲れが出てきたのか、どちらから言うともなくそこに座り込んだ。そして いつの間にか手をつないだまま眠りについてしまった。

次に気がついたとき、、、

『あ、あれ、やっぱりここだ。』

雨はやんでいる。服は着たまま。マスクとマントも着いている。そばにはあの巨木が あって、自分は手をつないだまま。その相手は、、、

『ス、スミレちゃん!あれ、パー子だ。』
『う、う~ん。あれ、1号。』
『パー子、さっき裸のスミレちゃんじゃなかった?』

パチン!(久しぶりにパー子の平手打ち)

『いきなり何を言うのよ。そんなはずないでしょ。1号のエッチ!』
『そ、そうだよな。やっぱりあれは夢だったのかな?』

とは言ったものの、じつはパー子も同じ夢を見ていたのだ。
(もしかして1号と同じ夢を見ていたのかしら。それにしても不思議だわ。)

1号は、たった今までつないでいたパー子の手の感触が忘れられない。

『僕たちいつから手をつないでたっけ?』
『さあ?それよりもそろそろ帰りましょ。』
『そうだな。』

2人は再びパータッチして東京に向かうのだった。

『そういえばぼく、何か大切なことを忘れているような、、、』

1号は少し思案気味。そんな1号をパー子が引っ張って飛んでいく。
それを見送るのは1本の古びた巨木。
久しぶりに近くに来た仲のいいカップルを見て少しからかったのか、それとも・・・。

©Violet