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★ すこし感じて・・・


冬の山中、温泉へ向かう道から大型バスが転落。バスはかろうじて木に引っかかって 持ちこたえているが、いつ崖下へ落っこちるかわからない。現場に到着した救助隊も あまりに危険なので手を出せない。さっそく現場へ向かったパーマン1号、2号、3 号は難なくバスを助け上げる。

『ふう、間に合って良かったよ』
『ほんとうね。でも寒くて凍えそう。』
『ウキキー』
『パータッチで早く帰りましょ』

そんな会話を交わしているパーマン達のところへ、このツアーの温泉宿の主人が現れ る。

『ほんとに何とお礼を言えばいいか。もしバスがあのまま崖下に落っこちていたかと 思うと、ぞっとします。とにかくパーマンさんたち、ささやかなお礼といっては何で すが、どうぞ温泉に今晩一晩ゆっくりと泊まっていってください。』

『僕たちもできればゆっくりしたいんですが、また別の事件が起こるかもしれないの で、すぐに戻らなければならないんです。』

こういう申し出には慣れっこになっている1号も、今回に関しては本当は温泉で少し 暖まりたかった。しかし、自分一人ならともかく2号、3号が一緒にいるので、リー ダーとしてこう言わざるを得ない。

2号、3号も1号がそういった以上、何も言えない。どことなく恨めしそうな顔をす る。それを目ざとく感じ取った主人、

『私としても大切なお客さんたちの命の恩人を何もせずにそのまま返したら、ずっと 後悔します。どうかおもてなしさせてください。』

ここまで言われると、無下に断るのもなんだか悪いような気がしてきた。

『2号、3号、どうする?』
『1号、リーダーでしょ。自分で決めなさいよ!』
『ウキキー』
『ちぇっ。都合のいいときだけぼくに押しつけて。』

といいつつも、宿泊するのはともかく、少し温泉で暖まるくらいならいいだろうと考 えた1号。

『よしっ。温泉で暖まってから帰ろう!』
『わーい。』
『ウキャキャ』

・・・
さてこの温泉、脱衣所は男女別々だが、中は混浴だった。そんなこととはつゆ知らず 3人は大浴場へ。


湯気に煙る温泉の中で・・・

ここはかなり広い浴場で、そのまま露天風呂ともつながっている。この温泉には野生 の猿も入ってくるので、ブービーはその中のメス猿とさっそく意気投合。一人残され た1号は照明をおとしてムード満点の広い浴場でただぼんやりとお湯につかっている。 シーズンはずれなので他に入っている客もいないようだ。

『ああ~。一仕事のあとの温泉はいいや。』

なんだかすっかりおじさんっぽい独り言を言う1号。と、湯気の向こうからまぼろし のようにひとつの人影が現れる。ぼんやりとはしているが、身長は自分と同じくらい だろうか。1号は最初ただの客かと思ったが、よく見るとすらりと伸びた脚、丸みを 帯びた腰のあたり、そして少し膨らんだ胸、、、女性だ!

『うわっ。ここ女湯だっけ。 パーマンが女湯に入ったなんて世間に知られたら大変だ。 ど、どうしよう。ほかに隠れるところはないし、 とにかくお湯に潜ろう』

パニックにおちいる1号。そうこうするうちにもむこうの客は近づいてくる。そして 1号が隠れようとしたその瞬間、声がした。

『あら1号じゃない。』

その声はまぎれもなくパー子。顔のあたりが見えてくるまで近づいたら、たしかに見 覚えのある赤いマスクがそこにあった。

『パ、パー子!』

パー子は小さなタオルで恥ずかしそうに前を隠しているが、体の輪郭までは隠しよう がない。

『なによ1号。女湯に入ってきて。エッチ!』

『ご、ごめんよ。すぐに出ていくから。でも、どこで間違ったのかなあ。』

1号はいつものようにパー子に殴られるかと目をつむって歯を食いしばったが、意外 にもパー子は何もしない。さっきの抗議の言葉も案外柔らかいものだった。 1号の方はおろおろしながらもパー子の方を向かないように注意しながら一緒に入っ てきたブービーを探す。

『お~いブービー、ここは女湯らしいぞ』

遠くからブービーの声。

『ウキャキャキキウキャ』
『なになに、お猿さんによればここは混浴だって!?』

少し胸をなで下ろす1号。これでパーマンが女湯に入ったという不名誉な噂を流され るおそれはなくなったわけだ。でも、ふと我に返り、パー子を意識してしまう。パー 子の方を見ないようにしながら、

『パー子、ここ、混浴なんだって。』

『あら、そうなの。じゃあ仕方ないわね。』
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案外落ち着いた声で答えて、パー子は頬を赤く染めながらも湯船にゆっくりつかる。 最初は恥ずかしがっていたパー子も、混浴という状況下では恥ずかしがっても仕方な いと思ったのか、温泉を楽しむ気持ちにかわりつつある。それに対して1号は目のや り場がないといった感じで、パー子とは少し離れて反対側を向いて首までお湯につかっ ている。顔は真っ赤。こんな状況ではやはり女性の方が肝が据わっているようだ。そ んな恥ずかしがっている1号を見て、

『1号って意外と恥ずかしがり屋なのね。かわいいとこあるじゃない。』

『な、何だよ』

一号の目にはさっき見たまるで妖精のような姿がこびりついている。不思議なことに 女性の裸を見たという感じではなく、何かこの上なく美しいまぼろしを見たという感 じがした。プールなどでミッちゃんの水着姿を見ても、これほど美しいとは思ったこ とはない。なにか、同じ女性でも別格の美しさといったものがあるように思われる。 ふだんこんなことには鈍感なミツ夫も、なぜかここではこれだけのことがすらすらと 頭の中を駆け巡った。それにしても、いつもケンカをしているパー子のイメージとど うも結びつかない。

『パー子ってもしかしたらすごい美人なのかな?でもまさかね。』

小声でつぶやく。

『え、なに?今なんて言ったの?私のこと?』

『べつに何でもないよ。それよりぼくはもうのぼせたから先に出るよ。パー子はどう ぞごゆっくり。今出るからこっちの方見るなよ!』

本当はまだ体が暖まりきっていない1号だが、恥ずかしくて息が詰まりそうなので、 早々に退散することにした。

『なによ、せっかくゆっくりミツ夫さんと一緒にいられると思ったのに』

『え?』

『べ、べつに。私はもう少し暖まっていくから外で待っててね。』

こっちを見るなと言われたが、あせりながら湯船から出ていく1号を、パー子はこっ そりと見送る。そしてそっとつぶやいた。

『ミツ夫さん、かわいい。』

・・・・・

いつものように1号を中心にパータッチして猛スピードで東京に帰る3人。ふだんは パー子と手をつないでも何も感じないのに、今は少し違う。パー子の手が華奢で、細 い指がすらっと伸びていることに気がつく。手をつないでいることをどうしても意識 してしまう。パー子の手に意識が集中してしまい、つい力が入ってしまう。それを感 じ取ったのか、パー子も強く握り返す。2人とも無言。不思議と寒さは感じない。温 泉で暖まったせいか、それとも・・・

『パー子も女の子、、、なんだ。 それにしても、今日のぼくは少し変だぞ!パー子がどうだっていうんだ。ぼくが好き なのはミッちゃんのはずだ。』

強がってはみるものの、やはりパー子のことが心の中に大きくひろがる。

『でも、ま、たまにはいいか。今日はせっかく一緒にお風呂にも入ったことだし。』

『え、1号、何か言った?』

『い、いや。それより早く戻らないとまたバードマンにお目玉をくうぞ。』

『わかったわ』

パワッチ。

©Violet