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★ 二度目の再会


1.6年後

ミツ夫が地球を去ってから6年。

美しく成長した星野スミレは今も変わらず国民的アイドルである。 パーマン時代と較べてやや髪をのばしたが、元と同じカチューシャ をつけ、これも昔と変わらないピンクのワンピースを好んで着ている。 身長はだいぶ伸びて、大人の女性としても高い方であろう。プロポーションも 悪くはない。

ただ昔と変わったのは、通う学校が小学校ではなく高校になったこと、 そしてもう一つ、パーマン活動をやめたことである。 ミツ夫が地球を離れてからしばらくはパーマンを続けていたが、 ミツ夫に会えない寂しさと、本業のほうが忙しくなりすぎて 両立しなくなってきたので、バードマンに頼んでパーマンを やめさせてもらったのだ。

1号がまだいた頃、パーマンとして活動する時は、 芸能人としてのふだんの自分ではどうしても得られることのない 自由でのびのびできる貴重な時間だった。たしかに1号とはしょっちゅう けんかをしていたし、手柄を競い合ったりもしていたが、いざ1号が いなくなってみると、パーマン活動がのびのびできていたのが、実は 1号の存在のおかげであったことがよくわかった。たしかに2号や 4号ともべつに仲が悪いわけではないのだが、やはり 自分を思いっきり遠慮なくぶつけることができるほどの 相手ではないのだ。それに気がついたとき、スミレは パーマン活動の引退を決意したといえる。

本来ならばパーマンをやめる時にはそれまでの記憶を消される のが規則なのだが、スミレとミツ夫の仲を知っているバードマン が気を利かせてくれ、一応パーマンの後方支援要員ということで、 いざというときだけ協力するという形式にしてくれた。 おかげで記憶を消されずにすんだ上に、パーマンバッジだけは 連絡のために残しておいてくれた。ただ、他のパーマン達には パー子が事情があって引退したことが告げられただけだった。

このバッジは普段のパーマン同士の呼び出しなどには反応しないが、 バードマンとの直接のやりとりだけは行うことができる。そして 何よりうれしいのが、呼び出そうと思えば、遠い世界に離れた ミツ夫と通信することもできるのだ。ミツ夫と遠く離れては いるものの、このバッジがあれば、すぐそばにいるように感じられる。 ただし、バード星で訓練に励んでいるミツ夫の事を思い、一度も ミツ夫を呼び出したことはない。ただ、呼び出そうと思えば 呼び出せる、と思えるだけで、うれしいのだ。

スミレはバードマンに頼んで、パーマンバッジを一見普通の 携帯電話に見えるよう、改造してもらった。こうしておけば 人に見られても怪しまれないし、呼び出し音が鳴るのも 不思議ではない。

スミレは、昔ミツ夫からプレゼントされたロケットと、この携帯だけは いつも肌身離さず持っている。そうすることによっていつもミツ夫が そばにいてくれるような気がするのだ。


2.みずうみの休日

さて、スミレは毎年夏になると忙しいスケジュールを何とかやりくりして 八ヶ岳の麓にある別荘に来るようにしていた。そこは小さな湖のほとりで、 白樺の木立に囲まれている。他も別荘は建っているが、お互いが見えないように 配置されており、一見したところ湖と森を占有しているように感じされる。 そんなこともあり、この別荘地は、他の人に見られずに過ごしたい 有名人、芸能人や政治家たちが多く使っている。星野スミレもそんな一人なのだ。

『ああ、いい気持ち。いつきてもいいところだわね。休みは3日 しかないけど思いっきりのんびりしようっと』

誰もいないが、思わずそんな独り言が出てくる。スミレは別荘のすぐ裏、 湖に面したところに白いデッキチェアを出して、そこに腰掛ける。ここでは サングラスもマスクも必要ない。素顔のまま思いきりくつろげるのだ。 湖はコバルトブルーで、風がないので湖面は鏡のように向こう側の山を 映している。その山の上の方には白い雪が残っていて、それが湖面に 反射する様は、空の深い青と相まって何ともいえない清涼感を醸し出している。 薄い水色のノースリーブを身につけたスミレは、大きな麦わら帽子を 顔に乗せたまま、しばらくうとうととする。

湖面を渡る風が肌に心地よい。あたりには木の葉の擦れ合う音と 小鳥の鳴き声くらいしかしない。実に静かなものだ。

と、そのとき、異質な音が耳についた。普通の人ならば気がつかない かもしれないが、昔パーマンをやっていたときの経験で、自分に迫る 危険に対しては敏感になっているのだ。もちろんそのおかげでこれまで 無事過ごしてこられたわけだが。

『何かしら。何だか金属っぽい音がしたけれど』

それは音というには小さかったが、明らかに何か人工的なものだった。

『近くの別荘の人かしら』

それ以上気にかけることもなく、スミレは再びうとうととし始める。 この別荘に来るときは、マネージャーに車で送ってきてもらうのだが、 一人でゆっくりしたいスミレは、いつも必要なもの一切を運んだ上で、 マネージャーには帰ってもらっていた。ここではスミレが料理、お掃除など、 普段はお手伝いさんがやってくれていることすべてを自分でやっているのだ。 それもスミレ自身が望んでいることである。将来ミツ夫のお嫁さんに なったときに家事ができなければいけないと思い、ここにいる間だけでも 花嫁修業のつもりでがんばっているのだ。そういうふうにするだけでも、 遠く離れたミツ夫と自分の距離を少しは近づけてくれるような気がする。

それはともかく、ここに滞在している間、スミレは一人きりなのである。 しかし、ここの場所は誰にも知られていないし、近所の人と顔を合わせる 事もない。これまで特に危険を感じたことはなかった。昔パーマンだった こともあるせいか、少し大胆なところもあるようだ。でも、なによりも スミレの心のよりどころとなっているのは、ミツ夫に連絡の取れる携帯電話 なのだ。これさえあれば多少の危険があっても、きっとミツ夫が助けに来て くれるに違いないと確信している。

(ガチャン)

今度ははっきりと誰にもわかるような音がした。

『何かしら』

思わず身構える。麦わら帽子を目深にかぶり、あたりを一通り見回す。 一見したところ、何も変わったところはない。

『いちおう見回った方がよさそうだわね』

パー子モードで別荘の方に戻るスミレ。扉を開けてまずリビングに 入り、続いてひとつひとつ部屋を見回っていく。

『やっぱり気のせいだったのかしら。湖に戻ってまたひと休み しようっと』

リビングから直接湖の方へ出られるドアを開けて一歩外へ出た。 そして・・・

急に顔にタオルを当てられて、揮発性の鼻につくようなにおいが したところまでは覚えている。


3.バード星で

それから2日前。場所はバード星・・・

『えっ、バードマン、今なんて言ったの?』
『だから1号に長期休暇を与えると言ったんだ』
『うわーい。長期休暇なんて3年ぶりじゃない。いったいどういう風の ふきまわし?』
『それはまあ、1号だってたまには地球に帰ってみたいだろうと思ってね。 ここんところずいぶんがんばって成績もトップクラスだし、そのご褒美も 兼ねてというところだな、まあ』
『ありがとう、バードマン!それで休暇はいつから?』
『明日から1ヶ月間だ』
『ずいぶん急だね。それに1ヶ月も。これは久しぶりにのんびりできそうだ』
『それに地球には1号を待ってる人もいることだしな』

と言われてミツ夫は3年前に休暇で地球に帰ったときのことを 思い出した。あのときは1週間の短い休みだったので、地球には 3日しか滞在できなかった。真っ先に向かったのは 星野スミレのところだった。6年前、地球を離れる直前にパー子から 正体を明かされたことがずっと心に残っていたからだ。 それにパー子がどうやら自分のことを好いていてくれる ということもうすうす感じていたのだ。

バード星に着いてしばらくはパー子と星野スミレという全く 異なるように見えた2人をなかなか同一視できなくて混乱していたが、 しばらくしてその違和感が不思議なくらいに消えていったのだ。 それとともに自分の心の中でもパー子の存在が大きなものとして 浮かび上がって来るのを感じていた。一緒にいるとケンカばかり していたが、離れると心にぽっかりと穴があいたように感じられた。 休暇がもらえたら、真っ先にパー子に会いに行こうと思っていた。

そしてパー子との再開。3年前に比べて、見違えるように 女性らしくなった彼女は涙を流していた。なによりも真っ先に 自分に会いに来てくれたことをうれしがっていた。会ったとたんに 自分に抱きついてきて、こう言ったのだ。

『私、ずっと待ってたのよ。あなたのことを思えば思うほど もう会えないんじゃないかって思えてきて悲しくなるから、 なるべく考えないようにするんだけど、あなたのことが自然に 心にうかんでくるの。今あなたがここにいることがとてつもない 奇跡みたいで、今にも消え去るんじゃないかって思えてしまうの。 お願いだからミツ夫さん、私を強く抱きしめて!』

この言葉を聞いて、自分の気持ちもはっきりしたと思った。

スミレ、いや、パー子を強く抱きしめると、パー子は力を抜いて 自分に体を預けたようになった。その時の感触が今も忘れられない。

休暇が3日しかないことを告げたときは少し恨めしそうな顔をしたが、 それでも再び会えるまでお互いにがんばろうと誓い合った。

そんなパー子と今度はゆっくり会えるかと思うと、月並みな表現だが もううれしくていても立ってもいられない。彼女の思いがいまも 揺るぎないものであるという確信がミツ夫にはある。

『ひとつ注意があるぞ』

バードマンの声で一瞬の夢から覚めたようになったミツ夫。

『パーマンが地球に戻ったことは誰にも知られてはならない。 パーマン仲間にもだ』
『えっ、そんな。せっかくひさしぶりに会えると思ったのに・・・』
『1号が戻ったことでパーマン達の様子が変わっては悪人どもに 何か感ずかれんともかぎらんからな。ただ、今活動をしていない 3号、いや星野スミレとおまえのコピーだけには会ってもかまわんぞ』

ほっとした表情を見せたミツ夫に対して、さらに話を続ける。

『念のためこれを渡しておく』
『これは?』
『変装マスクだ。パーマンマスクの上からこれをかぶると、 そのまま普通の顔になる。パーマンであることがばれなくてくむ。 しかもパーマンパワーはそのままだからな。まあ、地球では パーマン活動は原則禁止だが、とはいってもどうせおまえのこと だから悪事は見過ごせないだろう』
『お見通しだね。バードマンっていつからこんなに気が利くように なったの?』
『何いっとるんだ。わたしは昔から気が利くぞ』
『へこっ』

1ヶ月の休暇なので、もちろんコピーやパパ、ママ、ガン子、 ミッちゃんにも会ってみたい。その間自分の家で過ごすことに なるだろうが、それも楽しみだ。バード星に来たての頃、まだ すべてのことに不慣れな頃、ずいぶんホームシックになったことを 思い出した。

その日の夜、久しぶりに自分の部屋のバルコニーから、4.3光年離れて 黄色く輝く太陽を見た。バード星にきたてのころは毎日のように 空を見上げては涙ぐんだものだが、今晩の太陽はなんだかいつもより 明るく輝いているように思えた。


4.異常性格者

次に気がついたときは、見たことのない部屋のベッドの上だった。

『あれ、私いつのまに、、、』

見渡したところ、かなり広い部屋だ。調度品などは立派なもので、 ベッドもその感触からかなり上等なものとわかる。ソファーやテーブル なども高級品だった。でも、何か変だ。

『そうだ、窓がないんだわ!』

状況を思い出そうとする。

『そうだ。私、別荘を見回ってから湖の方に戻るとき、急に 意識がなくなって。。。何かを嗅がされて、、、』

少し朦朧としながらもそこまで思い出したところで、 本能的に自分の体に異常がないか確かめてみる。

『特に怪我をした様子もないわ。痛いところもないし。 別に手錠をかけられたってわけでもないし。。。あっ、持ち物は・・・』

とっさに携帯とペンダントを確かめる。

『べつに何も取られてはいないようね。いったいどういうことかしら』

(意識を失っている間に、傷つけようと思えばいくらでも できたはずだ。体の自由を奪おうとすればできたはずだし)

そこまで考えて、ひとまずは誰だか知らないけども、自分に すぐに危害を加える意志はないものと判断し、とりあえずは 少し安心した。

『さてと。この扉は開くかしら』

扉を押したり引いたりしてみるが、どうやら鍵がかかっているよう だった。

『さすがにここはダメなようね』

その時、どこからもなく声がしてきた。思わず身構える

『やあ、お目覚めのようだね』

『あなたは誰?私をどうしようというの?』

『何を言うんだね。ここは君のお部屋じゃないか。くつろいで くれたまえ』

『なにいってんのよ。突然無理矢理連れてきたくせに。姿を 見せなさいよ』

『これは気の強い奥さんだ』

『えっ・・・』

『それでは私の奥様に朝のあいさつにいくとしようか』

『・・・』

スミレは言葉が出ない。普通の悪人ならば扱いなれているので 何とかなるだろうという気がしていたのだが、この人は明らかに どこかおかしい。

(どうすればいいんだろう。ミツ夫さん・・・)

待つほどもなく、扉の方で鍵を開ける音がした。そして 入ってきたのは・・・

『おはよう。今日もいちだんときれいだね』

ガウンを着たその男は30代半ばくらいか。 身長180センチくらいで、一見したところ上品で優しい顔をしている。 ハンサムな方だろう。物腰も柔らかだ。ただ、どことなく線が細く、 青白い顔だ。そして、何となく見覚えがある。

『私をどうしようというの』

『だから朝の挨拶をしにきたんじゃないか』

『なにいってんのよ。私、あなたなんか知らないわ。私を かえしてよ』

『自分の亭主に向かってそんな言い方はないだろう。さあ、朝の キスだ』

と、男は近寄ってくる。本能的に後ずさりするスミレ。しかし、 男は容赦なくスミレを追いつめて両腕を掴んだ。強い力だ。 とてもかないそうにない。

スミレは逆らうことが無理と知ると、目を閉じた。男はスミレの顔を 引き寄せて額にキスをする。

それは女性を蹂躙するようなやりかたではなく、あくまでもレディとして 正当に扱うようなやり方だった。

どうやらこの男には私を傷つける気持ちは、少なくとも今のところ はないようだ。その点は安心できるのだが、さっきから今ひとつ 会話がかみ合っていないのが気になる。

『さっき、私が妻だとか、あなたが亭主だとか言ってた様だけど、 どういうことか説明してくださらない?』

『そちらこそ何をいまさら。君とは1年前にパーティーで初めて 会って以来、お互いの愛をはぐくんできて、ようやく今日結婚 したんじゃないか』

『なんですって!』

言われてみて、確かにこの男には前に会ったような気がする。。。 そうだ、1年前にたしか政財界の御曹司達が集まったパーティーに 出たときに・・・

・・・それは、ある有力財界人というか、財閥の方から、スミレの 所属するプロダクションに出演依頼があったのだ。そんなパーティーは スミレは気が進まなかったのだけれど、相手はスミレをCM出演で いつも指名してくれる会社のオーナーでもあるので、断り切れなかった のだ。実はそれ以降もたびたび同じ依頼があったが、1度出て以降は スミレの方で頑なに出演を拒んでいた。どうもああいう雰囲気には なじめなかったのだ。べつに上流階級の集まりや社交界のようなもの 自体が嫌いなわけではない。そこに集まっていた御曹司という人種 がイヤなのだ。

そうだ!あのパーティーで挨拶した人の中に、たしかいたわ!

『もしかしてあなた、あのパーティーにいた、、、』

『やっと思い出してくれたかね。わたしはこれでも財閥の 跡取りだからね。星野スミレの夫として不満はないだろう』

『なにいってんのよ。むりやりつれてきたくせに! 私はあなたの妻になんか死んでもならないわ!』

『今言ったことは聞こえなかったよ』

(えっ)

『君にはじめてあったときから、君のことが好きになってしまったんだ。 それから何度も君に会おうと手を尽くしたんだが、君のプロダクションの ガードが固くてね。どうしても会えないから、仕方なく僕は君のことを いろいろ調べてみたんだ。なあに、私の持っている組織の調査能力は その辺の警察なんかより遙かに上だからね。もっともその警察だって 使おうと思えばこちらの言いなりだけどね』

スミレは言葉が出ない

『まずはじめに、君の体について綿密に調査した』

(えっ!)

『そして君と寸分違わない蝋人形を作ったんだよ。もちろん一流の 蝋人形師を雇ってね。その蝋人形は僕の部屋に置いた。本物と違って 動いたりしゃべったりしてくれないのは残念だけども、蝋人形に向かって 毎日話しかけるんだ』

男の顔は次第に上気して赤くなってくる

スミレは顔から血の気が引いてきている。こんな男が自分の知らない うちに自分そっくりの人形を作って話しかけていたなんて、想像しただけで 身の毛がよだつ。

『そうするとその人形を通して君と心が通じるようになったんだよ。 わずらわしい手続きを省いて、君と直接心が通じ合えるようになったん だよ。そして先日、ぼくは蝋人形を通して君に正式にプロポーズした』

男の目はうつろになっている。

『答えはもちろん、、、イエスさ』 男はうっとりしてしゃべり続ける。

『だから今度君を迎えにいったんじゃないか』

『あなた、なにを言ってるの・・・』

スミレの声は弱々しくなっていた。

『答えはイエスだね!ここでもう一度返事してくれ』

『いやよ!』

『イエスだね!』

『・・・』

『イエスだね!』

『・・・』

『どうしてわからないんだ!』

急にかん高い鋭い声になった。スミレは恐怖のあまり 声が出ない。この男は異常だ。妄想と現実の区別がついていない。 しかも悪いことにその妄想を実現するだけの財力があるのだ。

そして男の腕がスミレの頸を締め始める。

『イエスだね!』

(このままじゃ殺される!)

途切れそうになる意識の中でスミレはその場を取り繕うように、 かろうじて言った。

『イ、イエス』

『きっとそう言ってくれると思っていたよ、ぼくのかわいい奥さん』

うってかわったようににっこりと穏やかな表情になる。頸から手を 離してくれた。一瞬前とは別人のようだ。スミレはまだ喉が少し 詰まっているような感じだ。

『ここは君の部屋だ。もちろん寝室は別にある。私と一緒の部屋だ。 今晩から一緒に寝る。夫婦なんだから不思議はないだろう』

とうとうそこまで言われてしまった。スミレは今いる立場に絶望感を 覚えた。

(私このままこの男の奥さんにされてしまうのかしら。 ミツ夫さん・・・)

『言っておくけど、ここは私の屋敷の地下にある。屋敷は広いし ここに窓はない。君の身の回りの世話はすべて私にまかせなさい。 なあに、君が必要なものはすべて運んであげるから、迎えに来るまでは ここにいなさい。君が不自由しないようにいつもカメラで見ているからね。 なあに、それも亭主のつとめだからね。何かあったらすぐに駆けつける』

『・・・』

『それと、一応君の持ち物を整理しておいたよ。それも私の 役目さ。あ、それと携帯電話を持っていたようだけど、ここは地下だ から通じないよ。誰かに電話をかけたいならば用件を言ってもらえれば すべて私が君のために伝言してあげるからね。かわいい私の奥さんの ためなら何でもしてあげるから』

と言い残して男は出ていった。あとで、外側から鍵をかける音が響いた。

スミレはしばらくは震えがとまらなかった。相手はあきらかに異常性格者 なのだ。用意周到なところをみると、自分の行き先は絶対わからないように してあるのだろう。もしかしたら警察に捜索させないように圧力をかける くらいのこともやるかもしれないのだ。どうしようもない絶望感がこみ あげてくる。

(そうだ、ミツ夫さん・・・)
(でも、この部屋、携帯が通じないって言ってたわ。だからこそ 携帯電話を取り上げなかったんだろうし)

(あっ、そういえば前にバードマンが言ってたっけ。バード星のような 遠く離れたところと通信するには電波じゃ無理だって。だからパーマン バッジもタキオンを使った特殊な通信方法だって。。。ということは もしかしたら電磁シールドされていても通じるかも。一応ミツ夫さんを 呼び出してみましょう)

スミレは、監視カメラで見られているので、気付かれないように何気なく ポケットの中のパーマンバッジ携帯を操作した。

(これでミツ夫さんに通じたかしら。あいにくこちらからは 返事できないけど。念のためもう一度バッジを押しておきましょう)


5.地球へ

バード星から地球までは、ワープを重ねても2日ほどかかる。

バード星をたって1日半ほど経って、地球まであと数時間という頃、 突然バッジがなった。バッジの表示は、その発信元が星野スミレで あることを示している。

『おかしいなあ。パー子には今度のことをまだ話してないのに。 それにあれから3年間、一度も呼び出しなんかなかったのになあ』

と思いつつも、少しドキドキしながら応答する。

『こちらミツ夫。パー子かい?』
『・・・』
『もしもし、パー子じゃないのかい?』
『・・・』

何も返事がない。

『おかしいなあ』

(ピピピピピ)

再び鳴った。

『もしもし、パー子なんだろ。どうしたんだ』
『・・・』

またしても返事がない。

ミツ夫は少し胸騒ぎしてきた。

『このバッジが誤作動するはずないし、パー子のバッジは パー子しか使い方を知らないはずだし。。。もしかして 話したくても話せない状況なのかな?』

(とにかく急いだ方がよさそうだ)

円盤は行き先の座標を入力するだけですべてオートマチックなので、 地球に着くまではとくに何もすることはない。しかし、その何もする ことがないということが、今はひどくもどかしく感じられる。


6.再会

3年前にはじめて円盤で地球に降り立ったときは、まだ操縦に慣れていなかった ので、ひどい着地のしかたで、あやうく大けがするところだった。しかしその後 バード星で円盤の操縦方法についても訓練を重ねたおかげで、今回はスムーズな 着地だった。

場所は東京郊外の山中。めったに人の来ないところだ。

『この円盤には隠れていてもらおう』

ミツ夫がなにやらリモコンを操作すると、たちまち円盤は消えた。

『さて。パー子からはあれ以来連絡がないけど、どうしたものかな』

ミツ夫は、パー子がもし何か事件に巻き込まれていたときのために、 パーマンセットを身につけた上で、例の変装マスクをかぶり、マントの 上からジャケットを着て、マントも見えないようにした。

ミツ夫自身は鏡を持たないので自分の顔はわからないが、それは 平凡で風采のあがらない青年の顔だった。ミツ夫とは似ても似つかない。 ただ、目立たないという意味では、これ以上適している顔もそうは ないだろう。

『とにかく、まずはパー子を探すのが先決だ』

ミツ夫のバッジには発信元確認機能がついている。 先ほどのパー子からの通信元を正確に割り出すことができるのだ。 しかもそれをホログラフを使って地図で表示してくれる。

画面に現れた場所は、都内でも高級住宅街にある、大邸宅だった。

『変だな。こんな所にパー子がいるのかな?とにかくもう一度 呼び出してみよう』

・・・

またしても返事がない。スミレはあの携帯をいつも身につけているはずだ。 やはり携帯に答えられない状況にいるのだ。

さっそくバッジが教えてくれた場所に急いだ。人目のあるところで 飛ぶのはやはりまずいので、どうしても電車を乗り継ぐことに なったが、それでも地球に着いてから2時間ほどでミツ夫は その屋敷の前に立っていた。

『ここだな』

正面の門に回ってみる。そこにはミツ夫でも一度は聞いたことのある ような、ある有名な財閥家の名前が書かれていた。その門を眺めていると たちまち警備の人が寄ってくる。

『きみきみ、なんだね、そんな所に立って。何か用かね』

どうやら疑われているらしい。ここはまず、おとなしくした方が いいだろう。

『いいえ。この辺はあまり来ないところなので、ずいぶん大きな お屋敷だなあと思って感心していたんです』

ミツ夫はその場所を離れるが、警備人はまだうさんくさげにこちら を見ている。

まともには中に入れてくれないのは明らかなので、裏の方に回って、 一気に屋敷の中に飛んだ。ずいぶん広い屋敷だ。庭がまた広い。 その木立の中に隠れて、もう一度パー子の居場所を正確に確認した。

どうやら地下室のようだ。

『まともに入っても相手を用心させるだけだし。昔のように もぐっていくか!』

思い立ったらすぐに行動に移すミツ夫。パーマンパワーで地面を掘って、 まもなくパー子がいると思われる部屋の下にたどり着いた。

そのころ部屋の中では

『ミツ夫さん、来てくれるかしら。きっと来てくれるわね。 でももしもこのまま夜になったら、、、ああ、考えるのもおぞましいわ』

その時、部屋の床の方から、

(コン、コン)

と、床をたたく小さな音がする。

カメラで監視されていることを考慮して、スミレは何となく気まぐれで 床に座ったという風にして、その場所に近づいた。

(おい、パー子!)

聞き覚えのある声だ!それは3年間1日たりとも想わないことのなかった 人の声。そして今度もきっと助けに来てくれると信じていた人の声!

(ミツ夫さん、ミツ夫さんなのね)

気づかれないように小さな声で答える。

(パー子だな。今そこに行くからな。待ってろ)
(待って。ここは今カメラで監視されているの。すぐに見つかるわ)
(パー子、いいか、これからぼくのいうとおりにするんだ)

しばらくして、スミレはカメラに向かって手を振る。

案の定、すぐにあの男がやってきた。 外の扉の鍵を開けている間に、泥まみれのミツ夫が床を破り、 素早く扉の陰になる場所に回り込む。

『僕の奥さん、どうしたんだね』

扉を開けながら男は言うと、そのままスミレの方に近づいてくる。

『あなたと私の結婚のことについて話し合おうと思って』

もはやスミレは怖じ気づいていない。最も頼りになる人が そこにいるのだ。

『そういうことか。何なりと話そうじゃないか』

男はさらに近づいてくる。その時、

(ガキッ)

少し鈍い音がしたかと思うと、男はそこに崩れ落ちた。 ミツ夫が背後から男を殴ったのだ。

『一応気絶させるだけのつもりだったけど、ちょっと 強すぎたかな?』

『まあ、こんなに泥だらけになって。顔がよく見えないくらいよ! 私のためにバード星から駆けつけてくれたのね』
『ま、まあね』

涙が止まらないスミレ。そしてミツ夫に抱きつく。 これまでの思いがあふれ出るスミレは、その思いをすべて出し切ろうと するかのように必死にミツ夫を抱きしめる。

『私、怖かったのよ。この男、私をさらって無理矢理結婚させようと してたの』
『何てやつだ!僕の大切な人に!』
『ミツ夫さん・・・』


7.後始末

『念のためにこいつには君のことを忘れてもらおう。 このままだといつまた同じことをするかもしれないからね』
『ええ、そうしてもらった方が安心だわ』

ミツ夫は、忘却銃を取り出してそこに横たわる青年の頭めがけて 発射した。

『これでいいだろう。目覚めたときには自分がなぜここに寝て いるのか思い出せないはずだよ』
『私たちはここを離れましょう』

まださっきまでの恐怖が心に残っているせいか、スミレは この場所を離れたがっている。ミツ夫にもそれがわかるので、

『さあ、他の奴らに見つかるとやっかいだから、この穴から 出よう。汚れてしまうけど、いいかい?』
『あなたと一緒ならどこだってかまわないわ』

ミツ夫の心が熱くなってくる。そこで今度はミツ夫の方から スミレを抱きしめる。

『ああ、ミツ夫さん・・・』

『おっと、こんなことしている余裕はないんだ。早く出よう』

2人は穴から外の木立まで一旦出て、そこから夜陰にまぎれて 空に飛び立った。

『一緒にぼくの円盤まで行こう。パー子も久しぶりに 空を飛んでみたいだろう』
『うれしいわ』

二人は雲一つない星空に浮かび上がる。今日は新月なので 地上から見られる心配もない。

『まあ、すばらしいわ。毎日空を飛んでいたあのころを 思い出すわ』
『よく一緒に飛んだものだなあ。なあ、パー子』
『そのパー子っていうのそろそろやめてもらえない?
私だってもう立派なレディなんだから!』

危険が去って気持ちに余裕が出てきたスミレは、 ミツ夫と初めてあった日に言ったのと同じことを言った。

『ははは。ようやくパー子らしさが戻ってきたね』
『だからパー子っていうの、やめてって言ってんのに!』
『じゃあどう呼べばいいんだい?まさか昔みたいにパーレディ なんて言うんじゃないだろうね』

少し真剣なまなざしになってミツ夫の目を見つめて、

『もうそろそろ、スミレって呼んでもらえないかしら』

ドキッとするミツ夫。スミレと呼ぶことは、大袈裟に言えば パー子と星野スミレを同一人格として、いや一人の女性として 好いてほしいと言っていることに通じる。

『スミレちゃん・・・』
『なあに、ミツ夫さん』

スミレの目は再び潤んでいた・・・


8.穏やかな時間

円盤をリモコンで呼び寄せて、その中に入る。2人はお互いを見つめ合って 笑い出す。

『ミツ夫さんの顔、真っ黒』
『そういう君だって!』
『あら、そうなの』
『まあ、しかたないさ』
『そうね。ミツ夫さん、きっと助けに来てくれると信じてたわ。ありがとう』
『あはは。実を言うとね、今回は1ヶ月の長期休暇で偶然地球に近づいて いたんだ』

スミレの目が輝く

『一ヶ月!そんなに一緒にいられるの!』

再びスミレがミツ夫に抱きつく。

『おいおい、ぼくだってコピーやパパやママ、それにガン子にも会いたいし、、、』
『何よ、私と一緒にいるのはイヤだって言うの!』
『そんなことないけど、、、とにかくシャワーでも浴びてきれいになろうよ』
『まあそうね。でもここにシャワーなんてあるの?』
『ばかにすんなよ!狭いけど一応宇宙旅行用だからシャワーくらいあるさ!』
『それじゃまずミツ夫さん、シャワー浴びなさいよ』
『それじゃ、お先に』

しばらくしてミツ夫が出てくる。変装マスクをつけたまま・・・

『きゃあ。あなた、誰?』
『えっ?ミツ夫に決まってるじゃない!あっ、そうか。変装していたんだっけ!』

2重のマスクを脱ぐと、紛れもないミツ夫が現れる。

『ああ、びっくりした。さっきは泥だらけでわからなかったけど、変装して いたのね』
『ごめんごめん。今度は君、シャワー浴びなよ。着替えは僕のでよければ 貸してあげるから』
『ありがとう』

しばらくしてシャワーを浴びたスミレが出てくる。その姿にミツ夫は、、、

『スミレちゃん、、、なんてきれいなんだ!』
『なによ、いまさら!こんなきれいな彼女を長い間待たせておいて!』

そんな会話を楽しみながら二人は眠ることもなく一晩を円盤の中で 語り合って過ごすのだった


9.安らげる場所

久しぶりの長期休暇と言うことで、ミツ夫は懐かしい人々に会って、 そして懐かしい我が家に帰って、しばらく過ごした。しばらく見ない うちにパパもママも少し歳をとったような気がして寂しかったが、 それでも元気そうなので安心した。ガン子はもう年頃の女の子で、 前に比べてずいぶん美人になっていて驚かされた。もうボーイフレンド がいるそうだ。

家にいる間はコピーには人形に戻ってもらっていたが、時々スミレに 会いに行くときはコピーにミツ夫役を務めてもらい、自分は変装して 出かけた。

『あら、いらっしゃい』

いつもスミレの部屋は、窓から入っていた。

『やあ。元気そうだね』
『2日間ご無沙汰だったでしょ。寂しかったわ』

本当はミツ夫が同じ地球にいると思うだけでうれしくてうれしくて たまらないのだが、やはり素直に言えない。

『まあ、そういうなよ。ぼくだって他に会いたい懐かしい人が いるんだから』
『なによ、私より大切な人がいるっていうの!』

むかしならこんな時必ずケンカになっただろうが、今は違う。 その違いはお互いに成長したことによるが、とくにミツ夫の方の 成長が著しいようだ。

『ごめん。あやまるよ。僕にとって一番大切な人は今でも、 これからもずっと、君さ』
『私もついカッとなってしまって、ごめんなさい。私の気の短さや やきもち焼きのところなんか、昔と全然変わらないわね』

少ししょんぼりするスミレ。それを見て、

『そんなことないさ。君はりっぱな大人の女性になっているよ』
『ありがとう、ミツ夫さん。わたし、今回はミツ夫さんにずいぶん 助けられたし、励まされたわ』
『それほどでもないさ』
『今日はうちに泊まっていって!いいでしょ。パパもママも ニューヨークに行ってていないし、お手伝いさんもマネージャー ももう帰ったし。。。私、食事も作るし洗濯も掃除もするわ。 ミツ夫さんは何もせずにのんびりしててくれればいいのよ。 ねえ、いいでしょ』

ミツ夫は昔、一人留守番しているときにパー子を呼び出して 家事をやってもらったときのことを思い出した。あのときは 繕い物といってはおしりに針を刺されたり、炭のように黒こげの ご飯を食べさせられたりしたものだが、あれから練習したのだろうか。

『そんなこと言って、仕事の方は大丈夫なの?』

話を少しそらしてみる。

『ミツ夫さんの休暇の間、できる限りたくさん休みを入れたの。あとが 大変だけどね。だって、こんどミツ夫さんに会えるのは何年後に なるかわからないんですもの。だから、ねえ、今日はゆっくりしていって!』
『じゃあ、今晩はお世話になろうか』
『うれしい!』
『それじゃあ、まず風呂に入って着替えて。その間に部屋を片づけるから。 お風呂に案内するわ』

風呂に入るミツ夫。ここは家も大きいが、風呂も大きい。ミツ夫の 家の3倍以上はありそうだ。ゆっくりとお湯につかっていると、 しばらくしてスミレちゃんの近づく気配。

『ま、まさか』

『ミツ夫さん、お着替え、ここに置いておくわね。ミツ夫さんが いつか来てくれると思って、用意しておいたのよ』
『あ、ああ、ありがとう』

少しほっとするミツ夫。でも次の瞬間

『ついでにお背中を流してあげるわ』
『い、いいよ!恥ずかしいから』
『何いってんのよ!どうせいつもちゃんと洗ってないんでしょ。 今日くらい私がきれいにしてあげるわ!』

言ったかと思うと、そのまま戸を開けて中に入ってきた。

『さあ、ここに座りなさい』
『うへー、厳しいなあ。じゃあ、とりあえず風呂を出るから その間あっちを向いていてよ』
『何恥ずかしがってんのよ!ミツ夫さんの裸なんて昔から何度も 見慣れてるわよ!』

たしかにそうだった。いつだったか接着剤で手が放れなくなったときは 全裸の姿を見られたものだ。でもあのころはまだ『こども』だったが・・・

『そんなに言うなら、出るよ』

ミツ夫は思いきってお湯を出た。 ミツ夫の裸を見てスミレは目を丸くする。

『まあ、ずいぶん成長したのね』

スミレは、想像以上にたくましい体になったミツ夫を見て、 顔を赤らめる。

『いまさら何いってんだよ!君が言ったんだぞ』
『そうだったわね。それではお背中をお流し申します。うふふ』
『あはは。なんだか本当に旦那さんになったみたいだ』

そんなことがあった後、スミレの心づくしのディナーを 食べてから、2人でバルコニーに出て空を見上げる。

特に会話はないが、気詰まりなことは全然ない。 会話などなくても心が通じ合っているのだ。

その晩、スミレはミツ夫が寝付くまで、まるで母親のように そばに付き添って、すやすやと寝息が聞こえてきたところで 電気を消して同じ部屋のソファーで寝たのだった。

ミツ夫にとっては、眠りにはいるまでスミレが目の前で 優しいまなざしで見守ってくれていることで、この上ない 安心感と共にリラックスして眠りにつくことができた。


10.二人の誓い

それからも何度もミツ夫はスミレの部屋で一夜を過ごした。 とは言ってもただ風呂に入って、食事して、寝るだけなのだが、 その間ずっとスミレが一切の世話をやいてくれた。彼女にこんな 一面があるとは知らなかった。ミツ夫にとってはそんな生活の まねごとのようなことがとても新鮮に感じられた。

一方スミレも、ミツ夫の世話をできることで、深い充足感を 得ることができた。これは、昔パー子だった頃、時々ひとり 妄想したものだった。

でも、ミツ夫の休暇の終わりが近づいていた。

『そろそろ君とお別れの時がきた』
『そんな。つい昨日会ったばかりのようだわ。』
『仕方ないさ。ぼくはまだ何年も訓練があるんだし』
『そうね・・・』
『また休暇ができれば来るよ』
『絶対?』
『うん』
『それまで私も自分の仕事、がんばるわ!』
『僕の方だって。地球で君ががんばっていると思うと、僕も自然と がんばらなくっちゃと思えてくるんだ』
『まあ。それじゃ私、ますますがんばらなくちゃね』
『でも、もし万が一助けが必要なときは必ずバッジを使うんだよ!』
『ええ。これがあなたと私を結ぶ糸なんですもの!』

そして別れの日・・・

『私、月並みなお別れの言葉なんか言いたくないわ。だって、 地球上のどんな恋人だってミツ夫さんと私ほど遠くに離れること なんてないんですもの!』

スミレは、ミツ夫の腕に抱かれながらささやく。

ミツ夫が乗るはずの円盤が傍らにとまっている。
ここはスミレの屋敷の庭。
コピーミツ夫も見送りにやってきている。

『離れていても、つながっているさ』

自分でもいい表現だと思った。

コピーミツ夫は別に冷やかすこともなく、優しそうなまなざしで 二人を見守っていた。

『ぼくもミツ夫くんの代わりを一生懸命果たすから、心配しないで 行って来て』
『ありがとう、コピー。パパとママ、そしてガン子もよろしくね』
『まかしといてよ!』

そして別れの時が来た。円盤に入ったミツ夫。気持ちを振り払うかのように 一気にワープする。

地上からは、一瞬のうちに円盤が消えたように見えた。

『さようなら、ミツ夫さん』

- 完 -

©Violet