sumiredan_b.gif(5572 byte)

トップページ > マイ・スミレダン > Violetさんの世界 > 守ってあげる!


★ 守ってあげる!


『ああ~暑いな~。まったくこんな日にパトロールなんて。そろそろ引き揚げようよ。』

八月はじめのある日曜日。陽はまだ高い。汗をかきかき、手足をだらりとしながらだ らしない格好で飛ぶ1号。

『何言ってんのよ!しっかりしなさい。暑いと思うからよけい暑いんでしょ。私なんか ほら、汗なんかかいてないわよ。』

強引に1号の手を引っ張って自分の肌を触らせるパー子。

『そりゃパー子が鈍感だからさ。』
『何ですって!私のどこが鈍感だっていうのよ。1号こそリーダーのくせにだらしな いんだから。』
『なにをっ。パー子の減らず口!』
『なによ~。せっかく注意してあげているのに、1号のばかー』

身構える2人。目には火花が散る。そばで見ていたブービーはいつものことなので 驚きもしない。またいつものけんかか、という感じで一人(匹)飛び去っていった。

そして今まさに2人が対決?しようとしたその時、ミッちゃんが通りかかり、1号を 呼び止める。

『あらパーマンじゃない、何してるの?』
『ミ、ミッちゃん、いやミチ子さん。パ、パトロール中なんですよ。』

ミッちゃんには極力凛々しいところを見せようとする。そして一瞬表情がでれっとす る1号を見て、パー子はますますムッとくる。これまでケンカしていたパー子を無視 してさっそくミッちゃんの方に飛んでいこうとする1号を見て、パー子は素早く先回 りし、1号を行かせまいとしてスピードを上げる。そして一瞬先に出られたパー子を 追い越そうとする1号。その勢いが余ったのと、地面に近づいたのでスピードを急に 落としたパー子が激突。というか、後方からパー子にぶつかった1号は、何とパー子 のスカートの中に頭を突っ込む格好になった。

『うわっ、なんだ、なんだ!』
『な゛に゛よ゛~ い・ち・ご・う』

見る人が見れば、パー子の頭からは2本のツノがはえ、背景にめらめらと炎があがっ ているのが見えたはず。1号は一瞬真っ暗になったので何が何だかわからなくなる。 なんだかなま暖かくて柔らかいものがマスク越しに顔に当たっている。そして息苦しい。 そんな様子を見てミッちゃんは、

『キャー、1号のエッチ~。よりによってパー子さんのスカートに顔なんか突っ込ん でっ!1号なんて大嫌い!』

涙目になったミッちゃんは走り去っていく。

『待ってミチ子さん、これは不可抗力なんだよ~』
(スカートの中にこもった声で)

ミッちゃんに嫌われたと思った1号はますますパニックにおちいるが、あせればあせ るほどスカートの中から出られず、中でもぞもぞするだけ。あいにく今日のパー子は タイトなミニスカート。そんな中に偶然にせよ頭を突っ込んでしまったら、きっちり とはまりこんでしまい、抜け出るのはなかなか難しい。

2人とも冷静になれば何とかなるものを、すっかり頭に血が上っている。パー子は自 分の下腹部あたりにある1号の後頭部をスカートの上から思いっきりぼかぼかと殴る。

『早く出なさい、1号。なにもたもたしてるのよっ』
『パー子、待って!今出るから。痛いよ!マスクをつけた力で思いっきり殴るな~』

パー子はかまわず殴り続ける。だいたいパー子はマスクを付けると性格が変わる傾向 がある(凶暴な方向に)。
そしてしばらくして・・・

1号がぐったりとなった。
動かなくなった1号は、クビだけがスカートに引っかかった状態で手足はだらんとし て、まるで首吊りみたいな格好になっている。
それに気がついたパー子。

『あら、1号、1号、どうしたの。返事ぐらいしなさいよ! もしかして頭を殴られておかしくなったのかしら!それともスカートの中で窒息した のかしら!とにかくまず1号をここから出すのが先だわ!』

さすがに頭の血が引いてきて少しは冷静になってきたパー子は、今度は1号のことが 少し心配になってきた。呼びかけても揺り動かしても反応のない1号をとりあえずス カートから出すために、近くのビルの屋上へ。

『ここなら人に見られる心配はないわね。』

パー子は自分の巻きスカートのベルトとボタンをはずして1号を出してやると、そこ に寝かせる。

『1号、1号、しっかりしなさいよ!何とか言ったらどうなの!もう、しょうがない んだから!』

パー子は最初、1号が例によって気絶したふりをしているのではないかとも考え、ほっ ぺたを平手打ちして、気をつかせようとする。しかし、そんな乱暴な『治療』も、今 回ばかりは効き目がない。どうやら本当に気絶しているらしいとパー子も悟った。

『そうだわ。まずマスクをはずさなきゃ。』

まわりに人のいないことを注意深く確認してマスクをはずし、ミツ夫の顔を見るが、 特に変わったところはない。

『頭の形は別に問題ないし、息はしているようね。脈もあるし。おかしいわねえ。も しかして頭を強く打ったので頭蓋骨でも折れたのかしら・・・まさか。どうしよう、 どうしよう。あんなに殴るんじゃなかった、、、だいたい私ってマスクをかぶると自 分でも驚くくらいお転婆になるんだから!っと。今そんなこと言ってる場合じゃない わね。もしミツ夫さんがこのまま死んじゃったらどうしよう。ねえ、ミツ夫さんしっ かりして~!』

一人で泣きそうになるパー子。

『そうだわ。まずお医者さんに見せなきゃ。そのためにはミツ夫さんの正体がバレな いようにまずマントをはずして、パーマンセットは私が預かってっと。』

さっきまでの態度とは一転してミツ夫をこの上なく大切にやさしく抱きしめてマント で隠すようにしながら自分の家へと運ぶ。

ここは都内某区にある星野スミレの自宅。広い豪邸だ。スミレの両親は今そろってニ ューヨークに行っているので、この広い家には自分のコピーとお手伝いさん、そして マネージャーがいるだけ。自分の部屋には、こちらから呼ばない限り誰も入ってくる 心配はない。ミツ夫をひそかに預かるにはもってこいの場所だ。

いつものように窓から帰ってくるパー子。家のまわりは例によってマスコミや熱狂的 なスミレファンが取り巻いているので、パー子はミツ夫が見られないように注意深く 隠して飛んでくる。コピースミレはそれを見て今日は何か大きな荷物を抱えているこ とに気がつく。

コピースミレ『お仕事ご苦労様。今日は何か荷物でも?』

無言のままマスクをはずしたパー子は真っ青な顔をしている。

スミレ『ミツ夫さん、私とケンカして気絶しちゃったの。ミツ夫さんの意識が戻らな くなったらどうしよう。わーん。』

動揺して泣きだしたスミレを見て、コピースミレはいつものように冷静にアドバイス をする。だいたい、コピースミレは、オリジナルスミレの冷静沈着な部分を集中的に 受け継いでいるようだ。

コピースミレ『またケンカしたのね。2人とも頑固なんだから。もっと素直になれば いいカップルなのにね。。。と、今はそんなこと言っている場合じゃないわ。そうね、 意識が戻らないのは心配ね。やっぱりお医者さんに見せた方がいいんじゃないかしら。 でも、普通のお医者さんじゃいろいろ聞かれたりするので面倒ね。スミレちゃんの専 属医はどうかしら?』

スミレはその職業上、風邪をひいたりしてもそう簡単に病院に行くことができない。 そのかわりに所属するプロダクションが契約したかかりつけ医がいる。この医師は契 約料とひきかえに、絶対にプライバシーを守ることと、呼べば優先的にかけつけてく れるようになっている。自分でも病院を経営しており、普段はそこで診療している。 人のいい白髪の老人医師だ。

スミレ『そうだったわね。ミツ夫さんのこと心配だからすぐに呼びましょう。ただ、 私たちがパーマンの格好だったことは絶対に言えないわよね。そうしたら2人とも動 物にされちゃう。。。』
コピースミレ『ミツ夫さんが私と遊んでいるときに頭を打ったことにしましょう。』 スミレ『いい考えね。』

・・・

30分後、専属医師が駆けつけて、スミレのベッドに寝かされたミツ夫の診察をする。 このときスミレはマスクを付けてパー子になっている。

医師『いったいどうしたんですか?』
パー子『この子、スミレちゃんの親友なんですけど、さっき一緒に遊んでいたときに 頭を打っちゃって、、、そうよね、スミレちゃん。』
コピースミレ『ええ。意識が戻らないのですごく心配なんです』
医師『わかりました。頭を打ったのは1時間ほど前なんですね。』
コピースミレ『そうだったと思います。』
医師『わかりました。さっそく診せてください。』

医師はプロとして真剣な表情になって一通りの診察をする。それを見てパー子はよう やく幾分落ち着いてきた。

医師『いまここで診察した範囲ではとくに異常ありませんね。おそらく頭を打った事 による一時的な脳振盪だと思いますが、意識を失ってから1時間というのは少し長い ので気になります。念のため頭の写真をとった方がいいでしょう。』
パー子『写真?』
医師『X線CTといって、頭の輪切り写真なんです。これで出血や骨折があれば一発で わかるんですよ。』
パー子『それじゃ先生の病院で、、、』
医師『ええ、すぐに私の病院に来てください。パー子さん、すみませんが患者さんと 私を運んでくれますか?それとスミレさんは目立つからここで待っていたほうがいい でしょうね。』
パー子『わかりました。すぐに行きましょう。』

パー子はいわれたとおりに2人を病院に運ぶ。医師の指示通りに目立たない入り口か ら入り、すぐにCTを撮ってもらう。結果が出るまでの間、パー子は生きた心地がしな かった。頭を殴った張本人が自分だという罪悪感もある。しかしそれよりも、もしこ のままミツ夫を失うことになった場合の喪失感がもっと恐かった。人のことでこれだ け真剣に心配したのは初めてである。

(もしも、もしもわたしのミツ夫さんになにかあったら、もう死んじゃいたい。でも、 でも、もしもミツ夫さんが寝たきりになったら、ミツ夫さん役はコピーに任せるとし て、ほんもののミツ夫さんの方は私がお嫁さんになって一生身の回りの世話をするん だわ!そうすればミツ夫さんは一生私だけのものに、、、)

勝手な妄想をして一人で泣いたりウキウキしたりするパー子。気を利かせてもらって 個室で待っているからいいものの、知らない人が見たら不気味だろう。

・・・

しばらくして医師が現れる。

パー子『どうでしたか?』
必死に祈るような目で医師を見つめるパー子。そんなパー子に圧倒されながらも答え る。
医師『大丈夫です。骨折も出血もありません。』
パー子(顔をほころばせて)『ワー!よかったあ。私、もうどうしようかと思ってい たんです。』
医師『パー子さんはスミレちゃんの友達ということですけど、ずいぶん友達思いなん ですね。一応写真上は何も悪いところはありませんけど、万が一ということもありま すから、意識が戻るまではちゃんと付き添っていてくださいね。意識が戻っても1日 くらいは家でゆっくり休ませてあげてください。』
パー子『ありがとうございます。』

パー子はさっそくミツ夫を抱えて自宅に向かう。先ほどにもまして大切に抱きかかえ、 マントでくるんで風が当たらないようにしながら。

自宅ではコピースミレが心配そうに待っていたが、話を聞いて安心する。ミツ夫は再 びスミレのベッドに横たえられる。パー子は再びマスクを脱ぐ。

スミレ『ミツ夫さん。私のためにこんな事に。』

まだ意識の戻らないミツ夫を見て再び涙するスミレ。

スミレ『あ、そうだ。ミツ夫さんのコピー、1号が戻らないので心配しているかもし れないわ。コピー、私のかわりにパー着してミツ夫さんのコピーに事情を説明してき てもらえない?私、どうしても今はミツ夫さんのそばについていたいの。』
コピースミレ『わかったわ。しっかりと見ててあげてね。』
スミレ『うん』(伏せ目がちに)

・・・

スミレ『心配しないで、ミツ夫さん。たとえどんなことがあっても私が一生守ってあ げるから。それにしてもなんてかわいい寝顔なんでしょう。目が覚めるまでそばにい てあげるわね。』

といいながら、スミレはミツ夫が寝ているスミレ自身のベッドの横に座り、ミツ夫の 顔に自分の顔を近づけ、じっと見つめる。ミツ夫の方は意識がないのでもちろんそん な状況に気がついていない。この光景を第三者が見たら、まるで母親が子供を寝かせ 付けているように見えたかもしれない。見ようによっては、ミツ夫がスミレのおまま ごとの道具になっているようにも見えるが、、、

しばらくして・・・

『う、う~ん。』
『あら、気がついたのかしら。ミツ夫さん、ミツ夫さん、』
『あれ。ぼくどうしたんだろう。』

意識を取り戻したミツ夫。自分の目の前、30センチも離れていないところに、一人 のかわいい少女の顔があるのに驚く。あまりにも近いので、彼女の息がミツ夫に感じ られるほどだ。心配そうな表情。まだ頭が朦朧としているので、考えがうまくまとま らないのだが、何とも表現しようのないくらい美しい少女。森の妖精といった言葉が 頭に浮かんだ。しかし、少しずつ頭がはっきりするにつれて、これがどこかで見たこ とのある顔であることに気がつきだした。

『うん?もしかしてあなたはスミレちゃん?わわっ!どうしてスミレちゃんがここに !?それにここはどこ?』

(あ、夢中になってて忘れてたわ。私今星野スミレのままだったんだ。どうしよう。)
『パ、パー子さんに頼まれたの。ミツ夫さんが気絶したから介抱してあげてって。こ こは私の部屋なの。』
『パー子が?それに、ぼくはスミレちゃんのベッドでずっと寝ていたの!?』
(あっ、そういえばぼくがパー子のスカートに頭を突っ込んでしまったときにパー子 に頭をガンガン殴られたんだっけ?でも、これはスミレちゃんにも言えないや)

『スミレちゃん、それでずっとぼくに付き添ってくれてたの?』
『ま、まあね。ミツ夫さん意識が戻ってほんとに良かったわ。』
『ぼくもスミレちゃんに付き添ってもらっていたかと思うとほんとにうれしいや。そ れにしてもパー子のやつ、こんなことになった張本人のくせにスミレちゃんに任せっ きりにしていったい何やってんだ!』

スミレは、星野スミレとしてミツ夫に感謝されたことは嬉しいのだが、肝心のパー子 の方はまたまた嫌われてしまい、複雑な心境。

『ミツ夫さん、パー子さんはミツ夫さんのこと、すごく心配していたのよ。』
『いくらスミレちゃんの言葉でも、そんなこと信じられないや!現に今もここにいる のはスミレちゃんだけで、パー子はいないじゃないか!』
『パー子さん、ほんとはミツ夫さんのことが心配で心配で仕方ないんだけれども、こ のままだとミツ夫さんのコピーが心配するだろうって知らせに行ってるのよ。本当は
ずっとそばにいたいミツ夫さんのことは親友の私に任せてね。』
『ふ~ん。パー子のやつ、ぼくのことそんなに心配してたのかな。』

スミレにこれだけ言われて、ミツ夫もさすがに少し考えを改める余地があるのではな いかと考え出した。さらにスミレ、

『パー子さん、本当はミツ夫さんのこと、好きなんじゃないかな。私にはそんな気が するの。』
『あのパー子が?まさか。』
『ううん。私たち長い付き合いの親友だからパー子さんの気持ちがほんとによくわか るのよ。信じて、ミツ夫さん。パー子さんがミツ夫さんのことを話してくれるときの 表情、それはそれは嬉しそうなのよ。私も同じ女性としてわかるの。』

スミレは必死な表情でミツ夫に語りかける。知らない人が見たら、まるでスミレがミ ツ夫に愛の告白をしているように見えるかもしれない。スミレはここでよっぽど自分 がパー子だと告白しようかとも考えたが、やっぱり今ひとつ決心がつかない。それは ミツ夫の気持ちにまだ確信が持てないのと、あくまでもパー子としての自分を気に入っ てもらいたかったからだ。

『スミレさんがそこまで言うなら、これからもっとパー子と仲良くするよ。なるべく ケンカしないようにして。。。』

自信なさそうに言うミツ夫。

『ミツ夫さんを診てくれたお医者さんがおっしゃってたの。今日一日はゆっくりして なさいって。ミツ夫さんがよければ、ここでゆっくりしていかない?私も一緒にいる から。』
『ありがとう、スミレちゃん。でも、なんだかパー子に悪いから帰るよ。』

さっきまで一緒にいてケンカをしていたパー子だが、いまここでスミレから話を聞い ているうちに、なぜか少し懐かしく思えてきた。そして、はやくパー子に会って、こ れまでのお礼を言いたいという気持ちが涌いてきた。そんなミツ夫を見て、スミレは 何とも言えない暖かい気持ちがわき上がってくるのを感じた。

・・・・・
翌日。今日もパーマン3人がパトロール。

『なーんて暑いんだ。もうそろそろ切り上げようぜ。なあブービー』
『ウキキー』
『あなたたち何言ってんのよ!暑いと思うから暑いんでしょ。もっと気持ちを引き締 めたらどうなの!私なんか全然暑くないわよ!』
『何を、鈍感パー子め!』
『んまあ、何ですって』

やはり2人はケンカするほど仲がいいということか。。。。

©Violet