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★ 変装パー子の大作戦


『ふう~。やっと終わったよ。』
『大変だったわね。』
『アキャキャ~』
『まったくこんな暑い日に火事なんて。あ~あ、コピーのやつ今頃冷房のきいた部屋 でのんびりしてるんだろうな。』

ある暑い夏の日、消火活動を手伝ったパーマン達3人。このところ天気続きで乾燥し ていたせいか、山火事が起きたのだ。火はみるみる広がってもう少しで住宅街に達す るところだった。消防だけでは手に負えず、パーマンたちが大量の消火剤を一気に撒 いてくれたおかげで鎮火した。

消火活動で全身汗だくになったパーマン達。その労をねぎらって、消防のスタッフた ちはお礼にアイスクリームをすすめてくれる。とにかく暑くて大変な3人は喜んで受 け取り、さっそく3人で分けた。かなり大量だ。2号と3号は食べきれないので持ち 帰ることにするが、1号は今頃冷房のきいた部屋でくつろいでいるはずのコピーに分 けてやるのが癪である。そこでその場でもらったアイス全部を無理して食べようとする。

『まあ、なんていじきたないんでしょ。』
『なに言ってんだい。コピーのやつはどうせいまごろ涼しい部屋で休んでいるんだか ら、、、』

一生懸命アイスクリームを食べる1号を見て呆れた2号と3号は帰っていった…

翌日。ミツ夫は少し熱っぽいことに気がつく。

『なんか調子悪いな~。少し気持ち悪い感じがするし。お腹も痛いや。昨日アイス 食べ過ぎたせいかな?』
ピピピピ~
『はい、こちらパーマン1号。』
『1号、遅いわよ。もうパトロールの時間でしょ。早く来なさい。』
『パー子、今日はちょっと調子が悪いんだ。休ませてくれないか。』
『何言ってんのよ。どうせ昨日アイス欲張って食べたからお腹こわしたんでしょ。 さっさと出てらっしゃい。』

どうもパー子には見抜かれているようだ。そしてこうなるとパー子に逆らうことがで きない。今日は体調が悪く、なおさら気弱になっているミツ夫。仕方なく

『わかったよ。今行くから。ちょっと待ってて。』

ミツ夫自身も、何となくお腹の調子の悪いのは、昨日アイスクリームを食べ過ぎたせい だと思っている。だからなおさらパー子に反論しにくい。重い体を動かして、コピー を残し飛んでいく。

『やあ、お待たせ~。』
『何よ、ちゃんと出てこられるんじゃない。』
『そう言うなよ。これでも無理してんだから。うっ、いてて。』

なんだかますます調子が悪くなってくるが、そんなことを言うとパー子に叱られそう なので、黙っている1号。飛ぶのにも気合いが入らない。なんだかよろよろしている。 そんな様子を見て

『何よ1号、しっかりしなさい。そんな格好人に見られたらパーマンの名誉にかかわ るじゃない!』

厳しいパー子は1号にハッパをかけて、引きずってパトロールさせる。いつもならそ んなときケンカになるのだが、今日は違った。1号には反撃する元気がないからだ。 もっとも元気があったとしてもパー子が勝つのは同じだが…

しばらくして1号の手が震えてくる。。。

『なんだかおかしいな~。今日も暑いはずなのになんだか寒気がしてきたぞ。』

パー子の握っている手が熱を持ってくる。1号の表情はうつろ。見た目にもしだいに 元気がなくなってくる1号。しかしパー子は容赦しない。

『1号、しっかりしなさいって言ってるでしょ。』
『そんなこと言ったって~』

パー子の頭には、1号はもしかしたら仮病を装っているのではないかとの疑いもあっ た。1号は本当に苦しいのだが、逆らおうとしても力が出ない。相変わらずの姉さん 女房スタイルだ。

そこに偶然ミッちゃんが通りかかる。苦しそうな1号とそれを強引に引っ張っていく パー子を見くらべて大声で抗議する。

『パー子さん、1号苦しそうじゃない!』
『ミッちゃん!』

おもわずほっとする1号。そんな様子を見て腹が立ったパー子は、1号を残して2号 を強引に引っ張って飛びさっていった。

『ふう、ミッちゃんのおかげでなんとか助かった。それにしてもパー子のやつめ。 うっ、いたた。』

苦しみながらもやっとの思いで帰宅した1号。病気はコピーされないコピーミツ夫は 元気に出迎える。

『パトロールお疲れさま。あれっ、どうかしたの?』

コピーミツ夫は様子のおかしい1号に気がつく。この辺はミツ夫自身のコピーなので、 さすがに敏感だ。

『お腹が痛くて、、、なんだか気持ち悪いし熱っぽいんだ。なのにパー子のやつった ら!』

さっそくコピーと入れ替わり、ママのところに行く。

『あら、ミツ夫さん、どうかしたの。』
『お腹が痛くて。。。』

ひたいに手をやると、熱い。かなり熱があるようだ。すぐに様子が変だと察知したマ マは、さっそくタクシーを呼んで病院へ向かった。ミツ夫はもう、ママに体を任せて、 されるままになっている。病院では事情を話して他の患者より先にみてもらった。

『先生、ミツ夫はどうなんでしょうか。』
『これは単なる食あたりや風邪ではありませんね。お腹を触ると、ほら。このように 硬くなっているし、かなり痛いようです。超音波エコーで見ると、お腹のこのあたり に腹水のたまっているのが見えるんです。』
『それで、いったいどんな病気なんでしょうか。』

不安そうに先生の顔を伺うママ。

『虫垂炎のようです。』
『虫垂炎?』
『盲腸のことですよ。』

盲腸と聞かされて、少しホッとするママ。盲腸はたしかにありふれた病気だ。

『ああ、そうですか。それじゃあ手術で?』
『虫垂炎は、最近では軽いものだと抗生剤を投与して様子を見ることもあるんです。 でもミツ夫くんの場合は明らかに腹膜炎を併発していますね。』
『腹膜炎?』
『ええ。虫垂炎は昨日あたりから症状があったと思いますよ。でも、これまで我慢し ていたんでしょうね。炎症を起こした虫垂は弱くなるので、放っておくと破れる場合 が多いんです。そうするとお腹の中に膿がひろがって、お腹全体が炎症を起こすんで す。それが今の状態ですね。これはすぐに手術しないと危険ですよ。』

危険だと言われて、気が動転するママ。オロオロになりながらもパパに電話したり手 術の手続きをしたりした。その間ミツ夫は意識がもうろうとしながらもお腹の痛みに 苦しんでいる。今日パトロールなどせずにすぐに戻ればもっと軽くてすんだのだが。。 。

腹膜炎の手術は一刻を争う。時間がたつと命にかかわる。そこでさっそく手術が行わ れた。ふつう、虫垂炎の手術はそれほど難しいものではないのだが、腹膜炎を起こし たミツ夫の場合、大変なものになった。手術室から出てきたのは、手術開始から10 時間後。もう夜中の1時だ。その間ママは待合室でじっと待っていた。手術を終えた 先生がそこへ現れる。

『あ、先生。ミツ夫はどうなんでしょうか』

気が気でない表情で尋ねるママ。でも、そのような質問には慣れているのか、手術を 終えた先生は少し疲れた様子ながらも快活に答えた。

『安心してください。手術は順調に終わりましたから。』
『ありがとうございます。』

先生を拝むようにお礼を言うママ。

『今ミツ夫くんは病室の方に移動しました。まだ麻酔から覚めきっていないのであま りお話はできないかもしれませんが、お母さんが行ったら安心すると思いますよ。』
『はい。本当にありがとうございます。』
『あ、それと今晩はお母さん、念のため病院に泊まってください。手術当日は状況に よっては再手術ということがないとは限りませんから。まあ、めったにありませんけ ど。』

笑いながら答える医師。その表情を見てママは少し安心した。そしてその晩一晩ミツ 夫のそばで過ごした…

朝になり、ミツ夫は目が覚める。なんだか長い悪夢を見ていたような気がする。しか し麻酔の影響でまだ朦朧とした状態だ。なんだかうっとおしいと思ったら、自分の口 には酸素マスクが乗っている。そばにママがいるのを見てすこし安心し、声をかけよ うとするが、お腹に力が入らない。うつらうつらしていたママだが、気配を感じたか、 ふっとミツ夫の方を見る。

『ミツ夫さん、ミツ夫さん。だいじょうぶ?』
『ママ、お腹に力が入らないんだ』

やっとのことで声を出す。

『無理にしゃべらなくていいから。手術も無事済んだし、ゆっくりと休んでらっしゃ い。』

いつもは厳しいママだが、今は別人のようにやさしい。ミツ夫も体が弱ってはじめて ママの優しさをしみじみとかみしめる。そんなママは、ミツ夫が無事なのを確認して 安心したのか、疲れがどっと出てきた。

『ミツ夫さん、ママは一度帰るけど、また戻るわね。ちゃんと先生や看護婦さんにお 願いしておきますからね。』

そう言ってママは出ていった。

この病院にミツ夫はしばらく滞在することになる。さて、ミツ夫は病院でバッジの呼 び出しがあってはまずいと思ったので、パーマンセットは家に置いてきている。当然 バッジの呼び出しにも答えられない。ミツ夫としてはまさか手術になるとは思わず、 すぐに家に帰れると考えていたのだ。

『パー子達、ぼくが呼び出しに答えないんで心配してるかな?でも、いまさらどうし ようもないし、まあしばらく休養するとするか。』

こうしてミツ夫が入院したまま数日が経った。

その頃パー子は…

『最近1号どうしたのかしら。バッジに全然応答しないし家にもいないようだし。変 ねえ。コピー、どう思う?』
『わからないけど、スミレちゃん心配だったら一度思い切ってミツ夫さんのママに尋 ねてみたらどうかしら。』
『そうね。このままじゃパーマン活動にも支障が出るし、、、』

思い立ったらさっそく行動に移すパー子。ミツ夫の家まで来ると玄関の前に降りたっ て上品にドアをノックする。力余ってドアを壊さないように注意しながら。。。そこ に病院から帰ったばかりのミツ夫ママが出てきた。

『こんにちは、ミツ夫さんのお母様。ミツ夫さんはいらっしゃいますか?』

ミツ夫のママには、いつも必要以上に丁寧な姿勢になるパー子。そんな様子を見てお もわずほほえましくなるママ。ミツ夫が虫垂炎で入院したこと、しかも少し手遅れだっ たので手術が長引いたことなどを話してあげる。

『えっ。まさかミツ夫さんが。。。だ、だいじょうぶなんでしょうか?』

絶句するパー子。マスクから見える目には、驚きと心配の表情が現れている。その様 子を見て、ミツ夫のママはパー子がミツ夫のことを心から心配していることを見抜く。 また、そこは女同士なので、その心配が、ある感情から発していることを直感した。

『たしかに一時は大変だったけど、もう病状は安定しているから大丈夫なのよ。パー 子さん、ミツ夫のことを心配してくださっているのね。よろしかったらお見舞いに行っ てあげてくださいな。』
『はい。。。でも、、、』

答えながらも、少し伏し目がちになる。病気のことを知ったパー子は自分があの日、 苦しがる1号を無理に引っ張りまわさなければもっと軽くすんだのではないかと思う と、後悔の念にとらわれる。そしてなによりもミツ夫のことが心配でならない。なぜ なのか自分でもわからないが、いてもたってもいられない。今すぐにでも飛んでいっ てそばについていてあげたい。

しかし、先日けんかしたままなので、パー子としてお見舞いに行くのは気が引ける。 ミツ夫はまだ自分のことを怒っているに違いない。それにパー子モードではまたケン カになるかもしれない。かといって素顔で行ったらそれこそ大騒ぎになってかえって ミツ夫に迷惑をかけてしまうだろう。例によってパー子は帰宅してコピーに相談する。

『スミレちゃん、前にドラマで全く別人に変装したでしょ。あれ、どうかしら。』
『そっか!じゃあ、、、』
『そう。スミレちゃんの専属メークさんに頼むのよ!』
『いい考えね!あれとはまた別の女の子に変装すれば、、、』

スミレは専属メークさんにお願いして、スミレとはわからないようにうまく変装させ てもらった。メークさんは普段からスミレと仲良しだし、何よりメークさん自身の技 術を直接スミレちゃんで試すことができるので、喜んで協力してくれた。

髪は2つに束ねて銀縁のメガネ、青のジーンズにクリーム色のTシャツ、そしてメー クによってなるべく平凡な少女に変装したスミレ。平凡とはいっても、もとがもとだ けに、美人であることにはかわりない。それでもなるべく目立たないように、そして なにより星野スミレであることが決してばれないようにしてもらった。この辺はプロ のメークさんだけにさすがだ。

『スミレちゃん、こんな格好してどうするの?』

メークさんは笑いながら尋ねる。本気で聞いているのではないのはわかるが、何も言 わないわけには行かない。

『うん。親しい友人が病気で入院しちゃって、どうしてもお見舞いに行きたいものだ から。。。これからも同じメークをしばらくお願いできるかしら?』
『そんなことならもちろん協力させていただくわ。他ならぬスミレちゃんの頼みだも の。もちろん誰にも内緒でね。』

いたずらっぽい表情で答えるメークさん。親に隠れていたずらしようとする子供のよ うにうきうきしている。

さて次の問題は、どのようにして自然にミツ夫のお見舞いをするかだ。ミツ夫だって いきなり見知らぬ人がお見舞いに来たら変に思うだろう。考えたあげく、結局病院の 別の人のお見舞いに来ているときに、偶然に出会ったように見せかけることにした。 大きな舞台でも平気で演技をするスミレのことなので、この程度のことならばまあ、 やってみればなんとかなるだろうという楽観的な気持ちだった。

一方ミツ夫は、手術後3日目。ようやく術後の朦朧とした感じからは脱したものの、 今度は麻酔の副作用のおかげでひどい頭痛に見舞われている。お医者さんに頼んで痛 み止めを点滴してもらったものの、とても起きあがることはできない。腕には点滴が 刺さっていて、お腹からは2本のドレナージ用チューブが出ているので、見た目にも 痛々しい。ようやくおしっこは自分で排出できるようになったものの、トイレまで行 くには肩を支えてもらわなければならない。これは看護婦さんがやってくれるが、ミ ツ夫も一応年頃の男の子なので恥ずかしくてたまらない。

ミツ夫の母も日中はだいたいいてくれるものの、ガン子のこともあるので午後2時頃 には帰っていく。もちろんこの病院は完全看護制なのでそれでもよいのだが。今日も ママは帰っていった。

さて、病院に現れた変装スミレ。まず受付でミツ夫の病室を尋ねると、その付近に近 づく。その時、ミツ夫は偶然にもトイレに行こうとしているときだった。ママはもう 帰宅したので本当は看護婦さんに頼んで連れて行ってもらうのだが、いつも恥ずかし いので、今日は勇気を振り絞って一人で行くことにした。今のミツ夫の状態では、歩 く場合は点滴やドレナージチューブ類をすべて台車のようなものにぶら下げて歩かな ければならない。かなりやっかいだ。そして、やっとのことでよろよろしながらも部 屋を出たところで、、、

(ミツ夫さん…)

『うっ、やっぱり痛いや。お腹に力が入らないし。どうしよう。トイレも我慢できな いし。。。』
『あの、もしよければ肩をお貸ししましょうか?』

スミレはおもわず声をかけてしまった。作戦というよりは、衝動的だった。ミツ夫の ほうは、初対面の女の子に声をかけられて戸惑うのが普通だろうが、今はそんな余裕 などない。

『えっ!?きみは?と、とにかく、、、すみません、今トイレに行くところなんだけ ど、お腹に力が入んなくて。。。トイレの前までついてきてもらえませんか?』
『ええ、もちろん。よろしければトイレの中まで付き添ってあげるわよ。』
『い、いや、それはちょっと、、、』
『そうですわね、ホホホ。じゃあとりあえずトイレの前までね。』

うまいことミツ夫にたどり着いたスミレ。しかもいきなり肩を貸してあげることがで きて、運が良い。

(ミツ夫さん、しばらく見ない間にずいぶんげっそりとしたわね。でも心配しないで ね。私がずっとそばにいてあげるから。)


『あ、ここまででいいや。どうもありがとう。』
『じゃあ、私ここで待ってますわね。』

なんとか用をたしおえて戻ったミツ夫。またスミレの肩の世話になる。さっきは余裕 がなかったけど、今は少し考える余裕ができた。この子はメガネをかけてはいるけど も、ずいぶんかわいい女の子だ。。。歳は自分と同じくらいか。肩を貸してもらいな がらも、どきんとする。そして病室に戻った。

『どうもありがとう。おかげで助かったよ。ぼくは須羽ミツ夫。3日前に手術したん だ。君の名前は?』
『ほ、星空まゆみ。』

この名前は、あらかじめ考えておいた。なるべくかわいい名前にしたかったのだが、 少しは自分の名前と関係あるものにしたかったのだ。「まゆみ」は、自分の従妹の名 前からとった。

『かわいい名前だねー。』
『ありがとう。』
『ここへは、誰かのお見舞いに来たの?』
『ええ。ちょっと。でもそちらの方はもう済んだから。よければここに少しいてもい いかしら?』
『も、もちろん。』

とは言ってみたものの、ミツ夫の方は初対面の女の子とどんな話をすればいいのかよ くわからない。しかもあいにくだんだん頭が痛くなってきた。麻酔の副作用だ。

『せっかくここに来てもらったけど、ちょっと頭が痛くなってきたんだ。』
『私のことなら気にしないで休んでね。私、勝手にここにいるから。お邪魔かしら?』
『とんでもない。君のようなかわいい子にそばにいてもらえたらうれしいよ。』
『まあ。。。』

(スミレは自分がかわいいと言われて嬉しいものの、何となく浮気されているような 錯覚にも陥っている。複雑な気持ちだ。)

麻酔の副作用として現れる頭痛は激しい。ふつうはとても起きてはいられない。ミツ 夫の場合もベッドに横になり、目を閉じてぐったりとする。そんなミツ夫を見て、

(ミツ夫さん、かわいそう。大丈夫かしら。)

ミツ夫は次第に意識が遠のいていく。そんな様子を見ながらスミレはついミツ夫の手 をとってやさしく包み込む。ミツ夫が寝ているのをいいことに、顔を近づけて、寝顔 をまじまじとのぞき込む。

しばらくして看護婦さんがやってきた。

『あら、かわいらしい方ね。ミツ夫くんのガールフレンド?』
『そ、そんなんじゃないんですけど。。。あの、ミツ夫さん、頭が痛いっていいなが ら寝ちゃったんですけど、大丈夫でしょうか?』
『あら、そう。たぶん手術の時の麻酔の副作用ね。本当なら鎮痛剤を注射するんだけ れども、眠ったのなら大丈夫。目が覚めた頃には直ってるわよ。』
『ああ、よかった。』
『ずいぶんミツ夫くんのこと、心配してるのね。ミツ夫くんもあなたのようなかわい らしい子に付いていてもらうときっと喜ぶわよ。』

頬を赤らめるスミレ。ミツ夫が目覚めるまでそばにいてあげたいと思う。

・・・

2時間後。陽はもう傾きかけて、オレンジ色の光が病室の壁に窓の形を作っている。 ミツ夫は目を覚ました。病気のとき、目が覚めたら夕方、という時。ふつうは憂鬱な 気持ちになるものだ。物憂げな気持ちでふと横を向くと、さっきの女の子。

『あれ!?君、まだここにいたの?』
『うん。ここにいてもいいって言われたから、ずっといたわ。』
『ぼく、頭が痛くなって眠ってしまったけど、どの位たったの?』
『2時間位よ』
『その間、ずっとここに?』
『ええ。ちょうどひまだったし、さっき会ったのも何かの縁だし、、、』

よく考えたらあまり理にかなっていない説明も、今の朦朧とした頭のミツ夫には別に 不審には感じられない。何よりも、この娘に対して最初から心が開きっぱなしなのだ。

『ねえ、ぼくたち前にどこかで会ったっけ?』
『え?どうして?』
『うん。なんだかそんな気がしたんだけど、そんなはずないよね。』
『・・・』

次第にうち解ける2人。ミツ夫の方は、彼女のことを、かわいい子だと思い、少し心 ときめかせながらも、なんとなくどこかであったことのあるような気がしている。点 滴が終わりそうになったら看護婦さんに連絡してくれたり、テレビが見たくなったら つけてくれたり、非常によく気がつく子だ。かいがいしく世話をする様子は、子供な がらもまるで夫婦のようだ。

『じゃあ、また明日も来るわね。』
『うん。待ってるよ。』

変装スミレがミツ夫のお見舞いに通い続けて数日が経った。この頃になると病状も落 ち着いてきたので、ママの方はあまり来なくなってきた。ミツ夫の方も、元気になる につれてあまりママに来てもらいたくなくなってきた。病人なんてそんなものである。 スミレが病室を訪れるのは決まって午後3時頃。彼女も学校があるのだ。その間、パ トロールの方はコピーに任せている。

『ほら、今日も来たわよ。あの子。』
『ほ~んと。かわいくて、ほんとにほほえましいわね。』
『あの姿って、どうみても恋人同士って感じよね~。』
『あ~。私もあれほどかいがいしく尽くせる恋人が欲しいわ~』

この頃になると看護婦さん仲間の間でも2人の間が噂になっていた。ミツ夫は、知り 合って間もないのにそんなに側にいて世話を焼いてくれる彼女に、少し恥ずかしいな がらも、いやな気がしない。そういえばこのあいだミッちゃんがカバオたちとお見舞 いに来てくれたが、早々に帰っていった。本当ならば、もう少しいてもらいたかった と思うべきなのだろうが、不思議と気持ちが充実していてそんなこと感じなかった。

ミツ夫はまだ一人でトイレに行くことができないが、彼女が、ついてきてくれる。最 初はもちろん恥ずかしくてとんでもない話だったが、彼女の方が強硬に『私に任せな さい。ミツ夫さんの面倒は私が見るから』といわれて、なかば強制的にトイレに連れ 込まれて、用を足した。一度垣根を越えるとそれ以降は何ともなくなるものである。 それ以来、トイレにもついてきてもらっている。頭が痛いときは、彼女が頭に手をあ ててくれる。もちろん頭痛止めを注射してもらえばよいのだが、こうしてもらうと本 当に頭痛がおさまってくるような気がするから不思議だ。まさに『お手当て』であろ う。それ以外の時も、彼女はほとんどミツ夫につきっきりといって良いほどだ。

さてスミレの方は。。。本当はミツ夫にパー子として謝った上で世話をしたいのだが、 どうもその勇気がわかない。それになによりも、寝たきりのミツ夫の世話をできるこ とにこの上ない充実感を感じている。いまここで正体を明かせば、この幸せな時間が 失われるような予感がするのである。

さて、今日も小さなスミレの花束を持って現れるマユミのスミレ。ミツ夫はもう起き あがって出迎えられるようになった。

『やあ、こんにちは。』
『あら、今日は起きあがっているのね。』
『まあね。もうだいぶ良くなってきたから。』
『でも、あまり無理しないでね。』

このような会話をしながらマユミを見つめるミツ夫。マユミは今日も花瓶の花を取り 替えている。

『マユミちゃん、その花、好きなの?』
『うん。お庭にたくさん咲いてるの。』
『ふ~ん。そういえばマユミちゃんの家ってどこにあるのか、まだ聞いてなかったよ ね。』
『あら、そうだったかしら。』
『ぼくと同じ学校じゃないよね。』
『うん。少し遠いかな。』

会話をしながらミツ夫は、マユミが何となく自分のことをあまり話したがっていない ということに気づいた。少しさみしい感じがするが、まあいいか、という程度で、こ の時はそれ以上深く考えなかった。

そんなミツ夫も次第に回復してくる。入院して1週間目にドレナージチューブが抜か れて、やがて水を飲めるようになる。自分でも歩けるようになった。体に余裕が出て くると、次第に彼女と話すことも多くなってくる。話しているうちに、彼女への想い がつのってくる。ただ、不思議なことに、何となくパー子に悪いな、という気がする ミツ夫。しばらく顔を見ていないけど、懐かしい気持ちがこみ上げてくる。

一方、変装スミレ。ミツ夫が次第に回復してきて、退院時期が近づいたことを知り、 何となくさみしい気持ちになっている。これまで、星野スミレとしての素顔はパーマ ン仲間に明かしていないが、逆に、だからこそパーマン活動ではのびのびとできた。 しかし、なぜかパー子になると自分が変わってしまう傾向があり、素直に自分の優し いところを出すのが恥ずかしがる傾向があった。今、変装したことによって『第3の 自分』になれたことが、非常に新鮮に感じられた。普段思ってはいてもなかなかミツ 夫に伝えられなかったことを、世話をするということによって表現することができた。

でもそのひとときもまもなく終わりを告げようとしている。スミレは、別れの時はきっ ぱりと別れようと思っている。でないとこれまでのようにパー子として1号と一緒に 活動できなるような気がしたからだ。

さて今日も夕方が近づき、毎日そうであるようにミツ夫は少し疲れてうとうととして きた。心の中が空白になるひととき。こんな時、人間は意外なひらめきをしたりする ものだ。そばにいるマユミちゃんを見るともなしにふと一瞬意識が飛んだ。その瞬間 夢を見たのである。そこにパー子が座っている夢を。

『パ、パー子!?』
『えっ!』
『あれっ、ぼく今どうかしたっけ?』
『何か言ったみたいだったけど、、、』
『ごめんごめん。なんだか少し気が遠くなったような気がして。。。』

(ミツ夫さんどうかしたのかしら。。。それにしても私のことがばれたのかと思った わ。意外と鋭いところがあるのかしら。)

今、一瞬目に浮かんだのは、たしかにパー子だった。いったいどういう連想なのかミ ツ夫にも理解できないのだが、目を開けるとやっぱりマユミちゃんがそこにいる。そ ういえばここしばらくパー子に会っていないが、今頃どうしているのだろう。もちろ んパーマン活動のことが気になるので、一度パー子に連絡したいとは思うものの、こ ればかりは何ともならない。でも、ミツ夫は少なくとも入院中はパーマン活動のこと は忘れようと決めていた。そのようなことを考えながらマユミちゃんを眺めていると、 なんとなくパー子とイメージがだぶってくる。しかもそれほど違和感がない。表現が 難しいのだが、そんな複雑な気持ちを、自らはそれほど複雑とは感じずに心にいだく ミツ夫だった。

『ねえマユミちゃん。』
『なあに』
『パーマン3号に会ったことある?』
『え?まさか。』
『そりゃそうだよね。』
『でもどうしてそんなことを、、、』
『いや、ちょっと。大したことじゃないんだ。』

それ以上この話をつっこめない2人。何となく話が詰まって息苦しさがただよう。ちょ っとした沈黙が流れたとき、その息苦しさを破るようにミツ夫が言った。

『そういえば、病院の先生がもうすぐ退院だって言うんだ。』
『え、そうなの?』

この時、マユミは意外にも少しさみしそうな表情を一瞬だけだがうかべた。ミツ夫は 鈍感な方だが、彼にしては長い病院生活でおとなしくしていたせいか、このようなこ とには少し敏感になっているようだ。そのため、このさみしそうな表情を見逃さなかっ た。

さて、今日はミツ夫の退院前日。

変装スミレはいつものように花瓶の花を交換すると、ミツ夫の顔を見る。

『ミツ夫さん、だいぶよくなったわね』
『これも君がずっと励ましてくれたおかげさ。』
『いよいよ明日退院ね。』
『マユミちゃん、これまで本当にありがとう。なんとお礼を言えばいいか。。。』
『お礼だなんて。いいのよ。私が好きでやっていたんだから。』

『好き』という言葉が出て、ドキッとするミツ夫。これは愛の告白に通じる。また、 ミツ夫も、ふだんパー子などには恥ずかしくて絶対口にできないような言葉も、マユ ミちゃんに対してならば言うことができる。マユミも同じだ。

『私、もうお別れしなくちゃいけないわ』

最初、ただ、もうお見舞いすることがなくなるという意味に取ったミツ夫。ところが、 マユミの表情がそれにしては真剣で、ミツ夫の方を見つめていることに気がつく。目 には涙がたまっている。びっくりするミツ夫。変装スミレは、泣くまいと思っていた のに、次第に涙が止まらなくなり、あふれ出る感情を行動で現すようにおもわずミツ 夫に抱きついてキスをしてしまった。

『ミツ夫さん、、、』
『マユミちゃん。。。』

抱きつかれたミツ夫。いきなりのことに驚きながらも、それほど意外な感じはしなかっ た。ミツ夫に押しつけられる少女の胸に2つの膨らみを感じて、あらためて彼女が女 性であることを感じてしまい、ドキッとする。すぐ目の前にあるマユミの目を見て、 なぜかとてもなつかしい感じがした。そして、、、涙の流れたあとが、なぜかくっき りと形となって残っていた。

『急にお別れだなんて。ぼくが退院してもきっとまた会ってよ。お願いだから。』

ミツ夫に真剣にそう言われると、スミレの決心も揺らいでくる。

『うん。』

弱々しくそう言いながら、あわただしく帰っていくマユミ。ミツ夫は呆然とそれを見 送る。

ミツ夫は、そのうち彼女にお礼を言うつもりだったが、思わぬ形で別れが来たので、 何もすることができなかった。呆然とするミツ夫。何か心の中の大きな部分がぽっか りとなくなったような喪失感を覚える。ミツ夫もこれまでクラスのアイドルミッちゃ んを好きになったり、星野スミレにあこがれたりしたが、この少女の場合、なにかもっ と、心に暖かみを感じるような充実感があった。そして不思議なことに、それとは正 反対のイメージのあるパー子のことを連想し、そして懐かしさを覚えた。

ミツ夫はどうしたことか、今彼女を追わなければ何か大切な物を失うような予感がし て、パジャマを着たまま駈けだした。もうこの頃には、軽く走ることができるまでに 回復している。そして病院から少し離れたビルの裏で、、、

『あっ、マユミちゃん』

20メートルくらい離れたところで、向こうむきの彼女を見つけた。彼女はポケット から小さなかたまりを取り出して、それを手でつまむと、見覚えのあるものが現れた。 赤いマスクと深緑色のマント。パーマンセット。しかもパー子のものだ。それを装着 した彼女は、さっそうと飛び去る。

呆然とするミツ夫。

『彼女がパー子だったのか。。。』

彼女は最後に涙を流しながらミツ夫に抱きついてきた。そしてこれまでの献身的な看 護。ミツ夫は頭が混乱しながらも、何となく納得させられるものを感じていた。そし て、パー子の優しさを知ったミツ夫は、心の中に暖かいものが広がっていくのを感じ る。

・・・

翌日。ミツ夫は予定通りに退院して、久しぶりに家に帰った。しばらく見なかった玄 関、階段、自分の部屋、そんな日常的なものがすべてこの上なく新鮮に感じられる。

『ああ~、久しぶり~』

おもわず叫ぶミツ夫。そんな様子を見てママは思わずほほえむ。

『退院したといってもまだ病みあがりなんだから、無理しちゃダメよ。』
『は~い。』

そういいながら、ミツ夫は久しぶりに自分の部屋でくつろぐ。ママがきちんと掃除し てくれているので、埃ひとつない。

『そうだ、ひさしぶりにコピーのボタンを押してやろう』

ミツ夫がコピー人形のボタンを押すと、そこには久しぶりに見る自分の分身が現れた。

『やあ、久しぶり。具合はどう?』

本当はボタンを押した瞬間に全ての情報が伝わっているのでわざわざ話す必要がない のだが、コピーミツ夫もせめてお見舞いのつもりで尋ねた。

『うん。もうすっかり良くなったんだけれど、君にもずいぶん長い間休んでもらった ね。』
『こんなに長い休みは初めてだね。』
『ぼくはこれから久しぶりにパー着するよ。』

ミツ夫は、久しぶりに空を飛んでみたいのと、少し誰もいないところで考えてみたい ことがあるので、パー着して、とあるビルの屋上に降り立った。あたりには誰もおら ず、考え事をするにはもってこいの場所だ。

これまでずっと献身的に付き添ってくれていた星空マユミちゃんがパー子であること は間違いない。でも、これまで素顔を絶対に明かさなかったパー子が、パー子である ということは隠してはいたものの、素顔で自分の前に現れるということがあるだろう か。そういえばマユミちゃん、メガネはかけていたが、美人だった。

『あっ、そういえばパー子はふだんメガネなんかかけていないぞ!』

どういうことだろう。あのメガネは。。。それと、たしか彼女が涙を流したとき、そ の痕が形となって残っていた。もしかしてあれは化粧をしていたのではないだろうか。 しかもかなり濃い化粧を。。。化粧のことなどまったく知らないミツ夫でも、その程 度の想像はできる。でも、小学生がなぜ厚化粧したりわざとメガネをかけたりしたの だろう。しかも決して正体をあかしたくないはずのパー子の素顔で現れるなんて、、、

『あっ、そうか。あれは変装だったのか!』

パー子のやつ、やっぱり素顔は明かせないらしい。珍しく鈍感なミツ夫にもそれだけ のことが推理された。

『でも、まあ、そんなことどうでもいいや。なにしろパー子がぼくの看病してくれた んだから!』

自分がパー子であることを明かさなかった。その理由はわからないけど、それには彼 女なりの理由があるに違いない。

『よし、パー子には今回のことを追究するのはよそう。でも、何かお礼をできないか なあ。』

1号はなけなしの貯金を持ってデパートの屋上に着くと、誰にも見られないようにマ スクとマントを外し、アクセサリー売り場へ向かった。パー子へのプレゼントを探そ うとするのだが、そんなことをしたことがないので何を買えばいいかわからない。仕 方ないので、思い切って売り場のお姉さんに聞いてみる。

『すいません。お世話になった友達にプレゼントしたいんですけど、何がいいでしょ うか?』
『あら、かわいい子ね。ガールフレンドへのプレゼントかしら?』
『え。そ、そんなんじゃないんですけど、まあ親しい友達です。』

顔が赤くなったミツ夫。店員さんはほほえんでいる。ミツ夫はそう言ったものの、店 員さんの言った言葉が正しいような気がする。

『その様子じゃ、やっぱり恋人ね。いいわ。とっておきのプレゼントを選んであげる から、私に任せてね。』

どうもこの店員さんはミツ夫のことが気に入ったようだった。

『あの、お小遣いが2千円しかないんですけど、、、』
『だいじょうぶよ。プレゼントは金額の問題じゃないから。ほら、このペンダントは どうかしら。これはね、ここが開いて、中に写真を入れられるのよ。ここにあなたの 写真を入れてプレゼントすればきっと喜ぶわよ。お姉さんが保障するわ。』
『で、でも。』
『ここにポラロイドカメラがあるから、君の写真はサービスで撮ってあげるから。私 だったらそんなすてきなペンダントを好きな人からもらったら、ものすごくうれしい わ。』

もう、自分の事のように、まるで夢見るような表情で言う店員さん。すでにカメラを 構えて今にも写真を撮りそうだ。ミツ夫も、そこまで言われたら何だか断りにくい。 仕方なく、

『それじゃあお願いします。でも、なんだか恥ずかしいな。』
『だいじょうぶよ。ほら、そのままこちらを向いて動かないでね。』

カシャッ

しばらくして写真が出来上がり、それをペンダントの形に合わせて器用に切ってくれ た。それを中にいれ、ていねいに包装してくれた。ミツ夫は自分で考える余裕を与え られないうちにそれを買わされた形になったが、とにかくこれは片づいた。ただ、やっ ぱりこれをパー子に渡すのは恥ずかしい。

『あ~あ。こんなもの買っちゃったけど、どう言って渡せばいいんだろう。』

翌日。1号は久しぶりにパーマン活動に復帰した。仲間にこれまで入院していたこと と、やむを得ず連絡できなかったことを言って謝った。パトロールが終わってからそっ とパー子を呼び出して、誰もいないビルの屋上に行く。

『1号、どうしたの?』
『いや、しばらく休んで迷惑をかけたから、謝ろうと思って。』
『いいのよ。でも、元気になってほんとに良かったわね。』

一見いつものパー子と変わらないが、目は少し潤んでいるような気がする。案の定星 空マユミになって看病してくれたことは口に出さない。

『おかげさまでね。』
『え!』
『いや、きっとぼくがいなくてもみんなががんばってくれると思っていたから、のん びりできたのさ。それでお礼をしようと思ったんだけど、、、』
『ほんと?1号が私にお礼なんて、初めてじゃない。』
『おおげさに言うなよ。ただ、ちょっと恥ずかしいんだよな。』
『なによ。そこまで言っておきながら。はやくプレゼント出しなさいよ。』

次第にいつものパー子モードが出始めてきた。

『ま、待った。今日はせかすなって。ちゃんと渡すから。ほら。』
『ありがとう。何かしら。あけてもいい?』
『まあ、大したものじゃないんだけど、あけたきゃあけなよ。』
『なんか投げやりな言い方ね。いいわ、今すぐあける!』

『あ!すてきなペンダント!これ、ロケットね!中身は何かしら?』
『それ、買ったときにサービスで写真を入れてくれたんだけど、それは捨てて好きに 使ってくれよ。』
『あら、ミツ夫さんの写真!』
『だから、それはただのサービスだって。恥ずかしいから早く捨てなよ!』
『ううん。私、このままがいい。』
『え?』
『このままこのペンダント大切にするわ。どうもありがとう。』

といいながら、ペンダントを大事そうに胸にいだく。ミツ夫はパー子の様子を見て胸 が熱くなる。この状況、前に経験したものだ。そう、星空マユミの時に。

『パー子、この間はありがとう。』
『え?』
『いや。なんでもない。パトロールは終わったけど、久しぶりにゆっくり空の散歩を しない?』
『いいわね!』

茜色に染まる夕焼けの中、2人は一緒に飛び立つ。どちらからともなく自然に手をつ ないで。。。。

©Violet