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★ 1号が故障した!?


夏休みに入ったばかりのある日。
遠くには入道雲が張り出しているが、それ以外は青い空。
今日も暑い日だ。

そんな中、パーマンたち4人は南極で遭難した 日本の探検隊を救助すべく現地に向うことになった。

『ニュースでは、南極点付近で吹雪にあって連絡が途絶えたそうなんだ』
『急がなきゃならないわね』
『それにしても今南極は冬でっせ。3号はんはさすがに準備がよろしゅ おまっけど、1号はん、そんな服装で大丈夫でっか?』

3号は厚手で大柄な毛皮のコートをリュックに詰めている。
4号だってスキーウエア持参である。それにひきかえ 1号の服装はTシャツに半ズボン、リュックの中には 体操用のトレパンとウインドブレーカーが入っているだけだ。

『冬物はママがしまってあるからしかたなかったんだよ。 パーマンマントにも少しは防寒機能があるし、まあ、なんとかなるだろ』

のんきな1号。たしかにここはまだ真夏。まだ南極が寒いという 実感がわいてこないのだろう。そんな中、南極に急ぐべくパータッチ した4人は119×8=952キロの猛スピードで十数時間かかって ようやく南極大陸にたどりついた。南極は冬なのでこのあたりから一日中 夜になってしまう。

『さすがに寒くなってきたな』
『だからいわんこっちゃない』
『なにいってんだよ、このくらい大丈夫さ。おいブービー、 マフラーになってくれよ』
『ウキキー』

追いかける1号に、2号は逃げ回る

そんな1号を見て体をを案じた3号は、

『私のコート、ほらこの通り大きいから1号くらいなら 一緒に入れるわよ。そのままパータッチにもなるし、こっち来なさいよ!』
『何いってんだい。女の子のコートになんか入れるかい』
『んまー、失礼しちゃうわね。人がせっかく親切に言ってあげてるのに』
『まあまあおふたりはん。今はそんなことより捜索がさきでっせ。 なにしろここいらはもう暗いから、無線を頼りに何とかやりまひょ』
『そうだな。南極といっても広いし、急がなくっちゃ。うう、ぶるぶる』

気温はすでに氷点下20度を下回っている。いくらパーマンセットを 身につけていても、日本の冬よりも寒く感じるはずだ。にもかかわらず 1号は寒さを振り切るかのように果敢にもパータッチの先頭に立って バッジを片手に遭難した探検隊からの無線をたよりに飛び始める。

『どうもこっちの方みたいだ。急ごう』
『1号はん、あんまり無理しすぎんよう。それに 暗い中でこのスピードですさかい、十分気をつけなきゃ あきまへんで。え、うわあー』

1号が急に止まったので、みんな前のめりになったのだが、 一瞬、4人には何が起こったかわからなかった。しかし暗い中で 目が慣れて来るにつれて、目の前に巨大な氷の壁が立ちは だかっていることがわかった。

『ありゃまー。こんなとこに氷山があったんかいな。1号はん 大丈夫でっか?』
『ミツ夫さん、大丈夫?』
『ウキキー』

1号はそこにうずくまって頭をおさえているのだが、心配そうに 尋ねる3人に、

『ちょっと頭を打っただけさ。この通りマスクをかぶってるから なんともないさ。さあ急ごう。』

探すこと2時間あまり、ようやく無線の応答が強くなってきて、 まもなく探検隊を探し当てた。

『やあ、パーマンたちだ。ありがとう、ありがとう。もうダメかと思ったよ』

探検隊は3人だが、持っていたGPS装置が故障したうえに荷物運搬のソリも クレバスにはまってしまい、立ち往生していたのだった。無線装置もソリと共に はるか下だ。とりあえずそこにテントを張って寒さをしのいでいたのだが、 もう食料が底をつき始めていた。まさに危機一髪のところをパーマンたちに 助けられたのだった。

『さあ、すぐに日本の南極基地まで運びますさかいに。もうだいじょうぶでっせ。』
『そうね。みんなで手分けしてこの人たちを運びましょ。。。』

『あれ、1号は?』
『1号はん、どこいったんでっしゃろ』
『ウキキー』
『たった今までここにいたのに』

そのころ1号は・・・

来る途中で氷山に頭をぶつけた1号だが、当初別にたいしたことが なかったのだが、途中から少しずつ目が見えにくくなってきたのだ。 幸い、完全に見えなくなる前に遭難者を捜し当てたのはよかったが、 今はほぼ完全に見えなくなっている。マスクを脱いでみようと思った のだが、なぜかマスクも取れない。さっきまで風が強かったので 気がつかなかったのだが、音も聞こえなくなっている。

『いったいどうしたんだろう。おーい、みんな。どこにいるんだい。』

叫んでみるが、風が強いせいか、仲間には聞こえない。 知らないうちに1号は一人、みんなと離れてしまった。そして、、、

『うわっ』

一瞬、体が浮いたような感じがしたが、何が起こったか知る 余裕もないまま、1号は気を失ってしまった。

目が見えずうろうろしているうちに、運悪くクレバスに落ち込んでし まったのだ

1号のいないことに気づいた3人は、とりあえず 遭難者の救助を優先するが、荷物も回収し終えて そのめどがついたところで、

『この人たちを運ぶのは2人でじゅうぶんでっしゃろ。
誰か一人残って1号はんを探した方がよさそうやな』
『私が探すわ。1号を放っておいて戻れないもの』
『そうでんな。それじゃ1号はんの方はパー子はんに任せることにして、 わいはブービーはんとこの人たちを運びまっさ』

そのころ1号は・・・

『う~ん。いてて。ここはどこなんだろう。どこかに 落ちたみたいだけど』

1号の落ち込んだクレバスは深さが千メートル以上。 たとえ目が見えたとしてもそこは暗闇。氷に囲まれた 空間は強風は防いでくれるけど、寒さは半端ではない。

『それにしても寒いや。こんな事になるならママにしかられるのを 覚悟の上でコートでも持ってくるんだった』

幸いけがはしていないようなので、手探りで周りを歩いてみる。 そこはせいぜい10メートル四方の氷の壁になっている。出口はない。 抜け出せるとすれば上しかない。

『仕方ないから、飛んでみるか。』

上に向かって氷にぶつかりながら飛んでみたが、その経路は 入り組んでいる上に目が見えず、氷を割ろうにもあまりにも 厚い氷であり、6600倍の力でも脱出は無理だった。

『ふう。どうしようもないや。このままこんな所で凍え死ぬのかな。 でも、とにかくバッジで呼び出してみよう』

『こちら1号。どこだかわからないけど氷の中に閉じこめられたんだ』

バッジで救助を求める1号。しかし自分自身は耳が不自由で 聞こえないので、バッジに向かって一方的に話すだけ。 はたして仲間がきいてくれたかどうかわからない。

一方、必死になって1号を探すパー子。1号からの 連絡をを聞いて、

『1号、無事なの?今どこにいるの?』

1号に話しかけるが、話が一方的で会話が成り立たない。 おかしいと思いつつも1号の話から、さっきの探検隊のソリが クレバスに落ちたことを連想した。

『もしかして1号、クレバスに落ちたのかしら。それにしても 1号ったら私の声が聞こえていないみたい!とにかく自分では 抜け出られないようね』

それだけのことを推測してさあ大変、と思い、バッジの方向に向かって 一人飛び立つパー子。あたりは暗く、寒さも激しくなってきている。 こんな中パーマンとはいえ一人で救助に向かうのは無謀かもしれない。 しかし、その救助を待っているのがミツ夫だと思うとパー子は いてもたってもいられないのだった。

『ミツ夫さん、すぐ行くからね。がんばるのよ』

心の中でそうつぶやくパー子。

バッジをたよりになんとか1号が落ちたと思われるクレバスを発見。

『やっぱりこの下のほうだわ!でも、こんな穴じゃすいすいと 飛んで行くわけにいかないわね!』

穴は狭いし、入り組んでいるようだ。

『どうか神さま、この中にミツ夫さんがいますように』

ふだんお祈りなんかしないパー子だが、そんな言葉が自然に 出てくるのだった。

『それにしても、思ったより大変ね。』

予想通り中は直線ではなく曲がっていたり途中が狭くなって いたりして、進むのが大変だった。しかし降りるにつれてバッジの 音が大きくなってくることから、ミツ夫がその先にいるのを確信した パー子は、大変であることも忘れてひたすら先に進むのだった。

そして、苦労の末に一番底にたどり着いた。しかし・・・

『あれ、誰もいないじゃない!おかしいわね。 バッジの音がこんなに強いのに。私、穴を間違えたんだわ! どうしよう。うわーん』

頭の中が真っ白になるパー子。自然と涙が流れてくる。

『ミツ夫さん、ミツ夫さん、どこにいるの。お願いだから返事して』

その思いが通じたのか、今度はひときわ強くバッジが鳴る。 かなり近いようだ。その方角は氷の壁。

『あれ、今度は下じゃなくて横からだわ。とにかく こっちに進むしかないようね』

覚悟を決めたパー子は、ミツ夫のいると思われる方に向かって 思いっきり氷に向かっていった。

『あれ、』

厚いだろうと思っていた氷が案外薄くて拍子抜けしたパー子。 実はそこはパー子が進んだのとは隣のクレバスの底だったのだ。 そこにパー子が見たものは・・・

『い、1号。。。』

とうとうたどり着いた。しかしそこで見たのは、 ぐったりして冷たくなった1号。かろうじてバッジだけは 握りしめていた。マントはボロボロである。

『まあ1号、こんなに冷たくなって。大丈夫? まさかもう死んでいるんじゃないでしょうね!しっかりして!』

実際、1号は凍死寸前だったのだ。幸い息はまだあったので、 何とかすぐに暖めてやらなければならない。凍り付いた マスクを脱がせようとするが、なぜかはずれない。 仕方なくそのままパー子の毛皮のコートの 中に一緒に1号を入れて暖める。パー子のコートは内側が毛皮に なっていて、ゆったりした作りになっているので、無理すれば 子供が2人くらい入ることができた。

『ミツ夫さん、しっかりして。私が暖めてあげるから。 死ぬんじゃないわよ!』

いつの間にか意識を失っていた1号だったが、暖かくて柔らかい 感触に、気がついた。

『あれ、ぼくどうしたんだっけ?』
『それはこちらが聞きたいわよ。でもとにかく、体はだいじょうぶ?』

問いかけるパー子に、1号は答えない。そうだ、 1号は聞こえないんだっけ。目も見えていないようだ。

逆に1号の方はといえば、、、

『誰だろう。でも暖かくていい気持ちだ。なんかいいにおいがするし』

相手を確かめるために、弱々しい力ながらパー子の顔や肩を 触ってみる。そしてちょうど赤ん坊のように抱っこされている 状態なので、顔の当たりに柔らかいふくらみが当たっている。

女性であることはすぐにわかった。そして、、、

(あれえ。マスクとマントだ)
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『パー子が助けに来てくれたんだね』
『なによ、今頃気がついたの!ずいぶん心配したのよ! あっ、聞こえてないんだっけ』

1号を抱きしめたままコートを閉じて元来た穴を戻り始めるパー子。 1号は、されるがままになっている。目と耳が不自由ではどうしようも ないからであるが、一方でこの方が暖かくて楽だからでもある。

物心ついて以来女の子の胸に抱かれるのははじめてだが、 女の子の胸がこんなにやわらかいものだとはじめて知った。 恥ずかしくなってくる。

『パー子って女の子なんだなあ』
『え!』

一方パー子は、1号に向かって、

『私が来たからもう大丈夫。まかせなさい。ミツ夫さんはいつでも 私が守ってあげるから。もしこのまま目と耳が不自由なままなら 一生面倒見てあげてもいいのよ!』

といってみるが、もちろん1号に聞こえないのをいいことに、 言いたいことをいっているのだ。ミツ夫が聞いたら何と言うだろうか。

苦労してようやく地上へと出たところで、遭難者を基地に送り届けてきた 2号と4号が待っている。パーマンバッジを聞いていたパーやんが 同じような推理をして、クレバスを探し当てたのだ。

1号をだっこして穴から出てきた3号を見て、ほっとしながら

『ありゃまー。ずいぶん仲のいいお二人はんでんなー』

とおもわず口に出す。

『なにいってんのよ。1号の目と耳がダメになったのよ!』
『ほんまでっか!そいじゃあすぐにバードマンはんに連絡したほうが よろしゅおまんな』

しばらくしてバードマンが現れる。

『おお1号、聞いたぞ。目と耳が不自由になったそうだな、 と。これは聞いてもしかたないか。どれどれ』

といって1号のマスクを調べ始める。

『これはマスクに強い衝撃が加わったせいで故障したようだな。 おまけに穴に落ちたときの衝撃でマントも破れとる。 これじゃ両方とも修理が必要だな』

といって1号のマスクとマントを難なくはずすバードマン。 1号は久しぶりに音と光を感じることができた。

『あれ、バードマン、それにみんな』
『おお1号、大変だったな。壊れたのはマスクだけで、 中身は大丈夫のようで安心したよ。マスクとマントは修理に1週間は かかるから、その間なんとかやってくれたまえ』

相変わらずのんきに話すバードマン。

『なんとかったって、どうすれば。。あっ』

話も聞かず飛び去るバードマン。あいかわらずそそっかしい。

『マントなしでどうやって日本に帰ればいいんだい!』

と言ってみるが、もうバードマンは見えない。

『ちぇっ』
『1号、さっきみたいに私が日本まで抱きかかえて行ってあげるわ』
『何いってんだい。女の子の世話になんかなれるかい』
『何よせっかく助けてあげたのに』
『別に頼んだわけじゃないよ』
『なによ~。1号のばか』

『1号はん、そうでっせ。パー子はんは本当にあんさんのこと、 心配しとらはったんでっせ』

言われてみて、やさしく抱きしめて運んでくれたのを思い出す。

『ごめん・・・つい意地になって。パー子が来なきゃぼく、 凍え死んでいたかもしれないんだよね。パー子、助けてくれてありがとう。』
『ううん。わかってもらえればそれでいいの』

再びミツ夫はパー子のコートの中に抱きかかえられて日本に向かう。 ちょうどミツ夫の顔のあたりには柔らかいふくらみがある。ふんわりして いい気持ちだ。恥ずかしいという気持ちよりも、どこか懐かしい感じが する。たまにはパー子に体を預けるのも悪くはないな、と思うミツ夫 だった。

『ねえパー子、君も女の子なんだね』

別にふざけたわけでもなく、正直に言うミツ夫。

『なによ、いまさら気がついたの!』

とは言ってみたものの、まんざらでもないパー子。ミツ夫を 抱きしめる腕に少し力が入る。

パー子(ミツ夫さんを助けられてよかった。こうやって思い切り抱きしめられたし)

ミツ夫(パー子も女の子なんだなあ。マスクの下はどんな顔なんだろう でも今回は助けられたよ。パー子にはあとでお礼をしなくちゃな)

その後しばらくは顔を合わせるたびに少し恥ずかしくなる2人だった。

©Violet