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★ 特集"星野スミレに密着!3ヶ月"


【12月25日 コンサートツアー年内最終日】
いつも通り13時に会場入りし、彼女は集中力を高めていく。
-初日と全く変わらないですね。
「もう習慣になっちゃってますからねぇ…あ、でも1日ごとに違うんですよ」
-と言うと?
「初日は『ちゃんとキッカケを拾えるか』とか、『リハ通りに進められるか』って不安だらけですから」
-キッカケって…?
「すいません。その、自分語なんですよ。歌のイントロとか、MCの話題のつなぎ方とか…」
-スムーズに進められるか?
「そうそう。何度やっても駄目なんですよねぇ」
そう言って彼女は笑う。苦笑ではなく、とても楽しそうに。
星野スミレ。子役としてデビューしてから十数年、その時ごとのイメージに縛り付けられることなく現在も一線で活躍する彼女のモチベーションの源はどこにあるのか?それを探りたくて初日からの同行取材を申し込んだのは9月のことだった。ドラマの撮影現場やスタジオでのリハーサル、そして今日に至るまでのこの3ヶ月。私は星野スミレを追いかけた。

【9月16日 宝映撮影所】
-おはようございます。
「あ、おはようございます」
-眠そうですね。
「夕べちょっと脚本(ホン)読みにハマっちゃって…」
-大丈夫ですか?
「ンー…今日はクミちゃん(メイクさん)が疲れるかも。ハハハ」
そのまま小走りで行ってしまった。声とは裏腹にとても元気そうだ。
撮影が始まると星野スミレは演技に集中する、といってもカメラが回っている時だけだ。カメラ位置の修正等いわゆろる『待ち』の時間ともなると、一つ所に納まらずにスタジオ内を駆け廻っている。あるときは監督とモニターチェックをしていたり、そうかと思えば他の出演者とのイタズラ合戦…私もいつの間にかカメラを取られていた。
『ハーイ、今回のメイン舞台が組まれている5スタでーす。で、この人が今回の親方でーす』
『親方って…』
『親方!今場所ここまでを見てどう思いますか?』
『ソウッスネェー…ってオイ!』
『イヤイヤイヤ、怒らせちゃいましたぁー。んじゃ、次イッテミヨー』
フラつく画面の向こうに見える人々は皆、口調は怒っているものの笑顔を浮かべている。
「昔、コメディ映画に出たときに、子供にもわかる位凄いイヤな雰囲気のなかで撮影したことがあるんですよ。で、実際ラッシュ観たときも全然笑えなくて。その時、映画って創っているその場の雰囲気をそのまま撮っちゃうんじゃないかな?って思ったんです。良ければ楽しく、悪ければ悲しく…だからって別にワザと悪くはしませんけど」
-ホラー映画のときは怪談をしたり?
「アー私それが一番ダメなんです。普通のシーンでも怖がっちゃうから」
とまた笑う。この映画でカメラを担当している石熊氏はこう語る。
「スミレちゃんとはけっこう仕事させてもらってるけどね、本当あの娘(コ)は凄いよ。カチンコが鳴るとね、消えるんだ」
-消える?
「うん、つい数秒前までソコに居たのは確かに星野スミレだったんだよ。でもね、いざファインダーを除くとソコにいるのは登場人物そのものなんだよね。芸能人ってのはホラ、オーラって言うの?何もしなくても『ここに居ます!』って雰囲気出すじゃない。それが一切無くなるんだよね。逆に『居て当り前』ちゅうか、不自然に見えない存在感を出すことができる。あの娘は本当凄いよ」
-それでNGも少ない。
「そうそう、なんでも完璧にこなしちゃう。でもそれが嫌味に見えないンだよなぁ…」
この日の撮影はほぼ滞り無く進み、20時。
-お疲れさまでした。
「あ、どーもぉ」
-今日はこれで終わり?
「いえ、これからラジオの生放送と、2・3回分収録して…あとぉー、ネェ後何あったっけ?」
-まだあるんですか?
「ツアー前はいつもこんなですよ。もうカンベンしてぇーって感じで」
で、また笑っている。本当に元気だ。

10月初め、彼女は撮影所とスタジオを往復する日々を送っていた。移動の車中で楽譜と台本を交互にチェックしている。しかしこれも毎年のことで、苦ではないと言う。
-混乱しませんか?
「何故かしないんですよねぇ。自分でも不思議なんですけど」
-どこかで切り替えができている。
「みたいですね。ン?や、違うな…」
それまで手元から目を動かすことなく答え続けた声が止まった。考えてみれば私達はとんでもない時期に取材を申し込み、彼女の邪魔をしている状態である。とうとう怒らせてしまったのか…
「フフフ…」
-どうしました?
「いえ、今まであまり考えたこともなかったから、なんか楽しくなっちゃって」
-楽しい…ですか。
「ええ、なーんか今『私の頭の中には小さい私が何人も居て、入れ替わり立ち替わりで私を操縦しているのかな?』って考えると、もう楽しくて楽しくて」
その後スタジオに着くまで車中は笑いに包まれていた。

【都内某所 レコーディングスタジオ】
ツアーのリハーサルと並行して、ニューシングルの録音も行われていた。異常な程のスケジュールである。しかし、ガラスの向こうにいる彼女の声からは疲れの色など微塵も感じられない。
『ごめんなさい。3フレーズもう一回。いいですか?』
「エェ?問題ないけどなぁ…」
『ちょっとひっかかっちゃって』
「いいよ。じゃあもう一回」
スタッフと頻繁にやりとりを繰り返している。納得できない箇所があったのだろうか。残念ながらずっと向こう側を向いていた為、彼女の表情をうかがうことはできなかった。
-いつも彼女からダメ出しするんですか?
「いや、ダメ出しどころかいつもリハ録りした後は一発OKなんだけど…さすがに今回は違うな」
-今回は?
「うん、この曲は彼女が一から作った初めての曲だからね。僕達が良いと思っても彼女自信が納得しないと意味がないんだよ」
最終チェックの段階で私達は外で出るように言われ、結局この日取材ができたのはここまでだった。

【11月7日 コンサートツアー初日】
彼女は13時に会場入りし、リハーサルの時間まで楽屋に籠った。この時間はマネージャーでさえ入ることができないと言う。
-前からこうなんですか?
「ええ、いつも初日はこうです」
-初日だけ、ですか?
「そう、初日はあの娘の不安がピークになるんです。『今日がダメだったら、このツアーは台なしになる』って…毎回言ってますね」
15時30分、ステージへと移動する。緊張感を漂わせてはいるものの、彼女の顔に不安な様子は見られない。
18時00分の開場時間ギリギリまでリハーサルは続く。
18時55分、楽屋前にスタッフ全員が集まり円陣を組む。
「声出してこー」
「オゥッス」
「息合わせてこー」
「オゥッス」
「楽しんでこー」
「オォォォォォォォォォィッス!」
気合いを入れた後、彼女はステージ入り口に立ちメンバー一人ひとりとハイタッチを交わしながら送り出す。ドラムが響き出すと軽く頷きながら右足でリズムをとり、イントロと同時に駆け上がって行った。

【同日22時 移動車内】
2時間半に及ぶコンサートが終わると、休む間もなく会場を飛び出す。彼女は安堵の表情で座席に沈み込んでいる。
-お疲れさまでした。
「エ?ヤダナーまだですよー」
-でも今日はこれで終わりじゃないんですか?
「ツアーは今日が始まりなんですから。その言葉は最期の最期まで言わないんです」
そう言ってまた…いや、流石にこの夜は微笑むだけだった。

【12月5日 地方FMラジオ局】
『はい、ということで本日のゲストはナント!星野スミレさんに来ていただきましたー!』
『どうも、こんにちはー!』
『星野さんは今ツアーの真っ最中だそうですが…』
ツアースケジュールの合間を縫って、彼女は勢力的にプロモーション活動を行う。しかし、彼女が訪れるのは極々小さな、いわゆるコミュニティ局だ。
-どうしてコミュニティ局をまわるんですか?
「皆に一番近い場所だと思うんです」
-近い?
「確かに大きな所に行けば広範囲に、どんな場所でも聞けます。けどそれだと私が本当にそこに居るのかわからないでしょ?それだったら、そこに居なきゃ聞けないコミュニティ局を使えば楽しいかなぁ…と。それに、いつも喋ることを変えると『ウチの方ではこんなこと言ってたぞ』とか、ファン同志のコミュニケーションのキッカケになってくれればって考えてるんですよね」
ここまでまわって来た局の放送をもう一度聞き返してみると、なるほど言いまわしが違ったり、質問に対する答え方も微妙に変化している。だからと言ってどこか矛盾している部分があるのかと言うとそうではない。一つ一つ丁寧に、彼女の言葉で返している。
-答え辛い質問はあるんですか?
「んー恋愛関係はダメですね。経験ゼロだから。ハハハ…」

【再び12月25日 楽屋】
これまで誰も入れたことがない開演前の楽屋に私は招待された。
-いいんですか?
「大丈夫大丈夫!今日は凄いリラックスできてるんですよ」
-何か良いことでも?
「ナンでしょうねぇ?ワッカンナイんですよねぇー。クリスマスだからかな?なぁーんてね」
-今回のツアーでは新曲を歌わないですね。
「新曲って?あぁ、あれはもう歌いません」
-歌わない?
「そう。歌わないし、テレビ・ラジオでも流しません。シングルも初回発売だけでおしまい」
-おしまいって、何故そんなにアッサリ言えるんですか?
「あの曲は、みんなに歌って欲しいんです」
-みんなに?
「私、それまで曲なんて思い浮かんだこともないのにある日フッと浮かんできて、その時のイメージが強烈だったんですよね。一人が口ずさみ始めて、それに一人、また一人って増えて来る。そして最後には大コーラスになってるんですよ」
-凄いですね。
「でしょ?だから『これは私だけの曲じゃない』って思ったんですよね。だから、CDを買ってくれた人には沢山の人と一緒にこの曲を聞いて欲しい。家族、恋人、友達…どんな形でもいいから一緒に聞いて、そして歌ってもらえたらいいなって…スゴい我がままですよね。ハハハ」
『星野さん、スタンバイおねがいしまーす』
「あ、ハーイ」
-今日で取材も終わりなんで、最後にもうひとつだけ良いですか?
「どうぞ」
-貴女からみて、星野スミレはどんな女性ですか?
「どんな女性…ウーン、そうだな…『パーマンにあこがれる女の子』かな」
-パーマン…ですか。
「そう、もちろんパーマンみたいに空を飛べなければ、力持ちってわけでもないですけど…。それでも『今自分が持っている力をフルに使って、一人でも多くの人を幸せな気分にしたい』そう思ってる。皆と同じ一人の女の…子って年齢でもないか。ハハハ」

この3ヶ月間。彼女はずっと笑顔を見せて…いや、辛い顔を表に出さないだけかも知れないが、それでも彼女は笑顔で居続ける。その笑顔に、周囲の雰囲気も自然と楽しくなる。それが彼女の持つ『力』だとすれば、例え空を飛ぶことができなくても、例え力持ちではないとしても、私達にとって彼女もパーマンなのかもしれない。
『…はい、特集でした。できるだけニュースです』
「なんだそりゃ。感想の一つでも言ったらどうなんだ。だいたい構成もムチャクチャじゃないか!新人ディレクターが担当したのか?」
文句を言いながらバードマンはテレビを消した。
「何しに来たのかと思えば…頼むからリモコン壊さないでよ」
隣に座っているミツ夫青年(もちろんコピー)は呆れた表情をしている。
「だいたい、スミレちゃんはパーマンを引退したんだろ?今さら何をチェックする必要があるのさ?」
「まぁ、いろいろあってな。そうそう、ビデオは残しておいてくれよ。芸能記事とかもちゃんと」
「スクラップでしょ、やってるけど何に使うの」
「ン?そのうち教えたるから。じゃ、アタシャ帰るよ」
「え、これだけの為に来たの?明日も早いってのに、勘弁してよぉ」
さっさと飛び立ってしまったバードマンにミツ夫は届く筈もない抗議の声をあげていた。彼の机の上にある星野スミレの新曲CD。ジャケットで微笑む彼女の胸元では一つのペンダントが輝いていた。

©Chi-gi