朝日ヶ丘スミレ団

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■ 君が知ってる本当の僕 第5話

シャトルの中で、満夫は眠いが眠れない状態でいた。隣の座席では、乗って早々に眠ってしまったインガが大いびきをかいている。うるさくてなおさら眠れない。
「ごめんね。朝早くから」
前の座席にいるケネスがテレパスで話し掛けてきた。
「いえ、でも何故ルーガに行くんですか?」
「ルーガは、アルジェの故郷なの」
「え?」
「あとは、着いたらわかるから・・・」
少しづつテレパスが弱くなっていく。どうやら彼女も眠ってしまったようだ。
仕方ないので、とりあえず瞼を閉じることにした。
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抜けるような青空、満夫は円盤に乗っている。
「え、ここは・・・」
そうだ、今日自分はバードマンになる為に旅立つんだ。周りには見送りに来てくれた仲間がいる。
ブービー、パーやん、パー坊・・・おかしい、1人足りない。そうだパー子がいない。
「ねぇ、パー子は?」
皆に聞いてみる。
「パー子?そんな子おりましたかいな?なぁ、ブービーはん」
「ウィーウィー」
「そんな、確かに居たんだ。彼女も僕達と一緒にパーマンとして・・・」
「彼女って・・・誰ですの?」
言われてハッとした。パー子の正体なんて見たことが無い。
「1号はん、夢でも見はったんとちゃいますか?」
「違うよ、夢じゃないんだ。本当なんだ」
皆がどんどん遠ざかっていく・・・・
(イラスト:カオスさん)
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「起きろぉー」
小突かれた痛みで目が覚めた。
『夢だったのか、妙な夢を見たな』
「着いたぞ。全く、お前さんのいびきがうるさくて全然眠れなかった」
不機嫌そうにインガがつぶやく。『いびきがうるさいのは・・・』と考えながらも、
「すいません」と一言謝り、頭をさすりながら席を立った。
到着ロビーでイムールと合流し、そのまま車に乗り込んだ。
惑星ルーガに関しては授業で習った程度の知識しかないが、街の雰囲気を見ると30年前まで内乱が続いていたとはとても思えないほどの発展ぶりだった。中心都市であるカタニアムを出てから30分、インテバンという街のとある家の前で車は停まった。
「・・・25年ぶりだな」
アルマイトは振り向き
「皆さん、我が家へようこそ」
満面の笑顔で言った。 満夫にはアルマイトの肩が少し震えているように見えた。

この家は、30年前までアルマイトが家族と暮らしていた所に、アルマイトがバードマンになってから少しづつ貯めてきた給料を使って建てたものだ。彼の食事がいつもカップ麺なのは、土地購入資金を捻出するためだったのだ。ちなみに、完済まではあと15年かかる。
中に入ると満夫達は客間に案内され、アルマイトとケネスは「準備があるから」と言って席をはずした。他の3人も同様に出て行ってしまったため、客間は満夫とハガンの2人だけになってしまった。
バードマンとして40年以上のキャリアを持つハガンを前に、満夫は訳も無く緊張していた。それを感じ取ったのか、ハガンは優しく言った。
「そう緊張するな。今日の私はただの“親父”だ」
怪訝な顔をしている満夫に、ハガンはアルマイトと出会ったときのことを話した。
30年前の内乱で両親を失っていたこと。そのとき自分がバードマンとしてではなく、一個人として彼の成長を見守りたいと思ったこと。どれも初めて聞く話ばかりだった。
「・・・そうしてアルジェがバードマンとして次世代のパーマンをスカウトする任務に就いたのが12年前だった。そのあとは、君の方がよく知っているな」
「はい」
「あの頃は地球から戻る度に『1号はやる気があるのか』とか『人選を間違えた』とか愚痴ばかりこぼしていたよ。いや勿論、褒めてもいたが。好い事も悪い事も、いつも話の中心には君がいたな」
話を聞いていて、満夫は面映い気持ちだった。
「実は君を養成学校に入れるとき、私の所へ相談しに来たんだ。『私も貴方の様に、父親の代わりを務めることができるでしょうか』ってね。私は『どんな結果であろうと、最後の最期まで決して見捨てず裏切らなければ大丈夫だ』と言っただけだった。それから2年後にケネス君の報告を受けたときはさすがに驚いたよ。本来ならば厳罰なのだが、当時の君の状態を聞くと・・・よほどの決断だったのだろう?」
「ええ、理由は覚えていないんですがあの頃僕は精神面で不安定だったんです。だからと言ってそこで彼に泣きついてしまったら、自分はそこまでの人間で終わってしまう。大袈裟ですが僕は真剣でした。それに・・・」
「それに?」
「意地があったんです。どうせなら彼が文句の付けようがない立派なバードマンになってやるって。でも、でも本当は彼の期待を裏切りたくなかっただけなんです。来た当初は地球の仲間に喜んでもらいたいのが1番にあったのですが、もう1つ『どうだ、あたしの目に間違いはないだろう』って彼が胸を張って言えるようなバードマンになりたいって思ってたんです」
「だからこそ『心配させたくない』か」
「はい」
ハガンは満夫の眼をじっとみた。濁りのない、真直ぐな輝きをもっている。
「そうか、アルジェは好い“息子”に出会ったな」
「えぇ、僕にとって大切な“親父”です」
そこへイリメンが「準備できたよ」と2人を呼びにきた。
「そういえば、何やるんですか?」
「え!何も聞いてないのか?」
『アルジェの奴、また言ってなかったのか。それにしても・・・』
ここに来てまだわからない満夫を見て、2人は笑うしかなかった。

庭に出ると椅子が並べてあり、その向こうに祭壇らしきものが組まれている。
いつの間に来たのか、プルネラが飾り付けを手伝っていた。
「なんか、結婚式みたいだな」
「イヤ、みたいじゃなくて結婚式なんだけど」
「え!誰が?」
「アルジェが!」
「誰と?」
「サラに決まってるじゃないか」
「サラって・・・ケネスさん!?」
「そういうこと」
アルマイト以上の天然っぷりに祭壇を組んだとき以上の疲れがあふれてくるイムールだった。が、満夫の反応は意外なものだった。
「そっかぁ、良かった」
「・・・あまり驚かんな」
「ええ、前に聞いたことがあるんです」
「聞いた?」
「ケネスさんって、アルマイトさんと一緒にいるとき、少し能力が不安定になってたんでちょっと気になって、聞いてみたんです。そしたらなんて言ったと思います?」
「何々?」
いつの間にか2人以外の全員が集まっていた。
「『一緒にいると、アルジェが気になって集中できない』って言ったんです」
聞いた瞬間、3人が納得したと同時にあきれとも諦めともつかないため息をついた。
「つまり、相思相愛だったのか」
いままで知らなかったというハガンの一言に、3人のため息が倍加した。
「ちょっと待て、サラの能力が不安定だっていつ気付いたんだ?」
気を持ち直して、インガが聞いた。
「いや、来て半年位の頃ですね」
驚いた。そんな短期間で能力の芽はそこまで伸びていたのか。本当に、満夫は計り知れない能力者だ。しかし一方で、3年目という今までの常識では考えられない早さで“テレパス・バリア”を修得できたのもうなづけた。

結婚式は本当にささやかに行われた。アルマイトが純白のドレスに身を包んだサライラの手を引き、祭壇でアルバ様に対して生涯添い遂げることを誓った。その後、披露宴を兼ねた昼食会でお開きとなった。

午後、イムールら3人は先にクラムへ帰り、プルネラを家へ送った後4人は戦没者共同墓地に来ていた。
「父さん、母さん・・・この人が僕の妻だよ」
墓前で固く手を握っている2人。サラの指にはアルマイトの母の形見の指輪が輝いている。
その2人を見ながら、満夫はここに連れて来られた意味を考えていた。
報告が終わったようで2人が向き直った。アルマイトの顔は少し険しくなる。
「満夫、スーツは持ってきているな?」
「はい」
「では装着しろ」
周囲を確認し、全員バードマンになった。
「ミツオ・スワ、私が今日君をここへ連れて来たのはなぜか。解るか?」
「はい、争いは悲しみしか生み出さない。それを確認させるためだと」
「そうだな、君にはこんな争いを出来る限り停めて欲しい」
ハガンが思わず口を挟んだ。アルマイトが軽く咳払いした。
「ミツオ・スワ、本来なら休暇中の所申し訳ないが、これから君の任務を通達する」
満夫の全身を緊張感が包んだ。
「ミツオ・スワ、地球時間3月15日0700時をもって第40・41・42星区連合艦隊司令官に任命する」
「ハッ」
敬礼をした満夫にアルマイトはいつもの口調に戻った。
「ま、あんまり力まんでいいから」
「ヘコー」
皆でひとしきり笑った後、クラム行の最終便に乗るために宇宙港へと向かった。

シャトルの中で、満夫は任務のことを考えていた。
『僕が司令官か・・・大変なことになったな』
そこへアルマイトがテレパスで話し掛けてきた。
「満夫、今日は朝からすまなかったな」
「いえ、そんなこと無いです」
「イムール達も色々忙しくてな、今日を逃すと次は何時集まれるかわからないんだ」
「そうなんですか」
確かにここ最近局地レベルでの紛争が増えてきているせいもあって、イムールやインガは星区の関係無く飛び廻ることが多い。ケネスも帰ったら激務が待っているという。
「当初の予定ではお前さんの担当は42星区艦隊のみだったんだが、他の艦隊の欠員補充もあって複数を受け持ってもらわざるを得なくなってしまった。それに関しては私の力不足だ。すまないと思ってる」
「そんな・・・」
「今のところ40・41・42星区まで戦火が及ぶ心配は無いわ」
ケネスが入ってきた。
「でも安心はできない。状況が変化する要素を沢山含んでる」
「という訳だ。あたしも出来る限りのことはする。それまで皆を引っぱってくれ」
「はい。でも・・・」
「でも?」
「あんまり期待しないでください」
「「ヘコー」」
前席の2人が少しズレたのが見えた。
「ま、まぁ何はともあれ、さっき父さんが言ったとおり、お前さんには出来る限り争いを停めて欲しい。いや、きっとお前さんならできるはずだ。あたしはそう信じているよ」
「私も信じてるわ」
「ありがとう、頑張ります・・・父さん、母さん」
とても静かな、しかし熱意溢れる誓いだった。


> 第6話へつづく

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