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★ ツリーハウス


「すごいなー!!」
「ウッキー、ウイウイ」
「スケールが違うわね!!」
「ついに来たんやなあ、遠かったで・・」
四人のパーマンは川のほとりに立って、夕焼けをバックに沈みゆく夕日を見ていた。
夕日というと美しいがどこか物悲しい感じのするものだが、ここでの夕日は四人の目に圧倒的な存在感を見せつけていた。眼下を流れる川も夕日に染まっていたがその赤は初めて目にする色だった。いや、川だけでなく周りのものすべてが驚きの連続だった。
夕闇が迫る中、大河アマゾンは無数の支流からの流れを集め大西洋に向かって流れていた。

パーマンはアマゾンの奥地で行方不明になった日本からの探検隊の捜索を依頼され、はるばる地球の裏側までやって来たのだった。アマゾンではいまだに新種の動物、植物が発見されるが特に植物には未知の薬効を持つものが存在している可能性があり、現にアマゾンで発見された薬物も少なくなかった。探検隊はそんな薬草を捜していたのだ。
「ぼくたちは明日アマゾンのジャングルにいくんだね」
「そや、それもかなり奥のほうや、探検隊の消息が途絶えたのは秘境中の秘境らしいで」
楽観的な1号とは異なり腕組みをした4号の声には少しだけ不安が顔をのぞかせていた。
「ウキキー、キキー」
「ブービーったら、到着してから興奮してるわね。野生の血が騒ぐのかしら?」
「ウイイー、ウッキキー」
「ジャングルの事ならまかせろって。頼むよ、ブービーの野生の感が頼りなんだから」
「そやな、たのんまっせ。ブービーはん」
「ウイ、ウイ」
「そろそろ、今日の宿舎に行きましょか。明日からに備えてしっかり栄養つけんとな」
三人が飛び立とうとした時、3号が慌てて言った。
「待ってよ、みんな。私の荷物持って行くの手伝って」
「パー子、遊びに来たんじゃないんだぞ。なんで、そんなに荷物が多いんだい」
3号の足元には大型のスーツケースが二つ置いてあった。
「今回は遠出するっていうから、着替えとか水着とか読みかけの本とか持って来たのよ。私、海外に行くときはいつもこのくらい持って行くのよ」
「いつもって、まるで芸能人がバカンスにでかけるみたいじゃないか」
「なんですって!レディーには身だしなみとかどんな時でも大事なのよ。1号にわかるもんですか!!」
「なんだと!!」
いつものように喧嘩を始めた二人を無視して2号と4号はすでにアマゾン川の上空を飛んでいたが対岸に人家の明かりが見えて来た。アマゾンでは川沿いに町が発達しており彼等が到着した町も川沿いにあった。
「喧嘩するほど仲がいいって言うけど困ったもんやで、なあブービーはん」
「それに、パー子はんのあの荷物、ほんまに芸能人やで」
3号に言い負けたのかスーツケースを二つ抱えて飛んでくる1号と涼しい顔で後に続く3号を二人は振り返った。
「ウキー」
「でも、腹へったわ。アマゾンといえば名物は何やったかいな。楽しみや」

次の日、四人はガイドと船で上流に向かっていた。
「なんで、船で行くんだよ。空から行った方が早いのに」
「そうね。私もそう思うわ」
不満をいう1号と3号に4号は地図を見ながら言った。
「これから、わいらが行く所は危険が一杯や。空から行っても一面に緑の海で自分がどこにいるかもわからへんで」
「探検隊が最後に寄った村に行って情報を集めましょ」
「わかったよ」
アマゾンでは川が唯一の交通手段である。空からは飛行場のある大きな町は別にしてジャングルの上空では方向感覚がなくなってしまう。川伝いに行くのが一番間違いがないのだが、それでも支流の支流となると地図にも載っていない事が多く迷ったら大変である。
「さよか、その村が探検隊のベースキャンプやったんやな」
マスクの翻訳機能でガイドと会話しながら4号は地図に印をつけた。
「わいらも、この村をベースにしましょ」
最初、対岸がかすんでみえた川もいまでは幅15メートルほどになり、ジャングルからは鳥や獣の鳴き声が無数に聞こえ始めた。
「無気味な声ね」
3号が不安そうに言った。
「これは、お猿さんの鳴き声や。アマゾンにはチンパンジーはおりまへんけど、ブービーはんなら王様になれるかもしれまへんな」
鳴き声に鳴き返していたブービーだったが、確かにアマゾンのお猿の王様になれるかもしれない。なぜなら、類人猿のような高等な猿はいないのである。
「ウッキキー、キーッキー」
「王様になんかなりたくないって、どんな仲間がいるか楽しみなだけだって」
「ウイ、ウイ」
「でも、王様もいいかもよ。かわいいお猿さんにモテモテかも・・・」
3号の言葉にまんざらでもない2号であった。

その村は人口二百人ほどだが、パーマンたちが降り立つと子供だけでなく大人も周りを取り囲んだ。異国から来た不思議な格好の四人組に興味津々なのだ。
「ようこそ、いらっしゃいました」
村長と思われる年配の男が話しかけて来た。四人は探検隊が使っていたゲストハウスに案内された。そこには沢山の植物標本、ラテン語の図鑑などが所狭しと置いてあった。
「わいは、この標本を調べてみますわ。貴重な薬草や、どこにでもあるもんやないやろ。そうすれば捜索する範囲が限定できるかもしれまへん」
「ぼくはちょっとこの辺りをパトロールしてくるよ。なにかヒントがあるかもしれないし・・」
「ええか、この村が見えなくなる所までは行ったらあきまへんで。それに単独行動は慎む事や」
4号はガイドと村長から標本の植物が地図のどの辺りに分布しているのか尋ねては地図に印をつけていた。
「よし、行こうか。パー子、ブービー」
「そうね」
「ウキー」
三人が飛んで行くのを見て、村人が言った。
「鳥人や」
「ほんまや、初めて見たわ」
「ちゃいまんがな、わいらはパーマンや、パーマン」
翻訳機能はマスクをつけた人間の言語環境を再現する。4号の耳には村人の言葉は関西弁であった。

「それにしても、広いわね。どちらをみても緑のジャングルしか見えないわ」
三人は上空からアマゾンのジャングルを見渡した。
「本当だ。あっ、あの川をぼくらは上がって来たんだね」
「違うわよ。あっちの川よ」
「何言ってんだよ。この方向音痴」
「なんですって、方向音痴はあなたでしょ」
「ウイイー、アキャー」
喧嘩をはじめた1号と3号を2号一人ではなかなか止められなかった。
「パー子なんか、方向音痴だけじゃなくて歌も音痴だよー」
「待ちなさい、1号!!」
二人はいつものように追いかけっこを始めた。これが始まると二人は夢中になってしまう。
2号はしかたなく二人の後を追った。

しばらくして、二人は自分達が迷った事に気づいた。
「ここはどこだ。村はどっちだっけ?」
「もう、1号のせいよ。このドジドジ!!」
「そうだ、ブービーならわかるはず。ねえ、ブービー・・あれ?」
いつのまにか、二人を追いかけていた2号の姿が消えていた。
「ブービー、どこ行ったの?」
周囲を見渡しても、2号どころか緑のジャングル以外なにも見えなかった。
「そうだ、バッジで連絡をしよう」
二人がバッジを手に持った時、黒い影が横切った。それはアマゾンにすむ鳥のなかでも頭がよく、光り物が大好きなオオハシだった。オオハシは二人のバッジをくわえるとジャングルに消えた。
「待てー、泥棒」
二人が追いかけた時、すでにオオハシの姿はなかった。オオハシは美しく目立つ鳥だがジャングルのなかではその色彩は保護色となり近くにいても見つけるのは至難の業である。
「あーん。これじゃ、助けも呼べないわ」
「せめて、晴れていれば太陽から方角がわかるのに・・」
頼みの太陽も厚い雲に隠れてしまっていた。
そして、遠くの方で雨がジャングルに降り注いでいるのが見えた。スコールである。
「スコールがきたらびしょ濡れだよ。とりあえず、雨宿りできる場所をさがそう」
二人はジャングルの中に入ったが昼間でも暗いジャングルは曇り空ではなおさらだった。
「なんか、毒蛇でもいそう。1号、木の上で雨宿りしましょ」
「そうだね。それが一番安全かも・・」
二人はパーマンパワーで木の上にツリーハウスを作る事にした。木で骨組みを作り、ツルで固定した。屋根には大きな葉っぱで完成である。
「なんか、ターザンの家みたいだね」
「そうね。私たちターザンとジェーンってとこね」
共同作業が喧嘩していた二人を仲直りさせた。
「1号、さっきはごめんね」
「ぼくも悪かったよ。ぼくのせいでこんな所で雨宿りするはめになっちゃったね」
二人がツリーハウスで肩を並べて座ったとき空の水瓶があふれ、辺りは滝のようになった。
葉っぱにあたる雨音は激しく、他には何も聞こえなかった。
二人はお互いの温もりを感じながら無言でスコールがあがるのを待っていた。

同じ頃、4号はスコールの雨音を聞きながら帰りの遅い三人を心配していた。
「ほんまに、困った人たちや。バッジでよんでも応答なしや。ブービーはんがいるから大丈夫やと思うけど・・」
その時、何気なく地図を見ていた4号の目が輝いた。
「なんや!標本の植物のある場所は一本の線で結べるで」
「村長はん、この線の先には何かありますやろか?」
村長はしばらく考えていたが、少し心配そうに言った。
「この線の先にはよそ者嫌いのインディオの部落があるはずや」
「なんやて、よそ者嫌いのインディオやて。調べてみる価値はありそうやな」
4号が立ち上がった時、雨音は弱くなり昨夜見た夕焼けが周りを赤く染め始めていた。
その時、村人の一人がくちばしの大きな鳥を連れて来た。
「村長はん、森でオオハシつかまえたで」
「こいつは、立派なオオハシや。おや?何かくわえとるで」
それを見た4号は驚いた。オオハシがくわえていたのは1号と3号そして2号のバッジだった。
「この鳥、どこで捕まえたんや?」
「十キロほど離れたジャングルやけど、いまからは無理や。明るくならんと行けまへんで」
「連絡がつかんはずや。それにしても何があったんやろ?」
心配顔でバッジを受け取った4号だったが、三人の無事を信じていた。なぜなら、彼等は仲間であり、パーマンなのだから!!

「ブービーどこ行っちゃったんだろう?」
「心配要らないわ。今頃、お猿さんの王様になってるかもね」
「うん、ありうるよね」
二人のツリーハウスも夕焼けに赤く染まっていた。目の前には果てしなく続くアマゾンと沈み行く夕日があった。50メートルはあるという木の上からみる風景は昨夜以上に圧倒的だった。
「なんか、すごいね」
「ええ、恐いくらいきれい」
夕日の方向からやっと方角がわかった二人だがすでに辺りは闇に包まれようとしていた。
今から行動してもすぐに方向はわからなくなる。
「しかたないわね。下手に動くよりここで朝を待った方が安全ね」
「そうだね。でも腹減った」
1号のお腹が大きな音をたてた。
「ふふっ、はい、これ食べられるはずよ」
3号は葉っぱの下からとげのある果物を取り出した。
「これ、さっき。葉っぱを集めていた時みつけたのよ。スミレちゃんが事務所の社長さんからいただいた果物にそっくりだもの」
割ってみると果肉は甘い匂いがした。おそるおそる口にした1号だったが
「パー子、これおいしいよ」とむさぼりついた。
その時、3号のお腹がグーッと大きな音をたてた。
「いやーね、でも大丈夫みたいね。わたしも食べよっと・・」
「えっ、大丈夫って・・・ぼくに毒味させたな」
喧嘩しようにも空腹には勝てない二人はスイカのように種を相手にぶつけながら日本で買うと数千円する高級フルーツを幾つも胃袋におさめた。

アマゾンの夜空は満天の星だった。日本で見なれている蠍座は逆向きで大小のマゼラン星雲は雲のように星空に浮かんでいた。そして星の密度が濃い天の川はまさにミルキーウェイで、その中には南十字星が輝いていた。
暗闇の中で、二人は肩を並べて夜空を見上げていたが1号の耳に3号の声が聞こえた。
「知ってる?南十字星にはニセ十字もあるってこと」
星のことはほとんどわからない1号はキョトンとしていた。
「わたしね。オーストラリアに行った時、南十字星をさがしたことがあるの」
「自分でかってに星を十字に結んでこれがそうねと納得していたんだけど、本物よりニセ十字のほうが大きな十字なのよね」
「へぇー、そうなんだ」
「現地の人に教えてもらうまでニセ十字を本物と思い込んでいたんだけど、見かけにだまされちゃだめよね。」
「で、どれが本物なの?」
1号にはどの星も十字に結べてしまう。
「しかたないわね。ちゃんと覚えてよ」
3号は楽しそうに説明を始めた。月のない夜だったが1号にはぼんやりと3号の姿を見る事が出来た。星明かりとでもいうのだろうか。3号にも1号が見えているようで時々こちらを見ているのがわかる。
「君は本物なんだろ?」
「えっ?」
突然の言葉に3号は闇の中に1号の顔を見た。
「いや、何となく・・・・」
「私はパー子よ。本物の・・あなたがよく知っている・・・」

鳥の鳴き声がうるさいくらいだった。3号が目を覚ますと地平線に太陽が顔をのぞかせようとしていた。隣では1号が大の字になって軽くいびきをかいていた。
「鳥の声じゃ起きそうもないわね」
昨夜、どちらが先に寝てしまったかわからなかったが、ジャングルで二人っきりなのに恐いという気持ちはなく横になると安心して眠ることができた。
「顔洗ってこよっと」
3号は明るくなって来たジャングルの小川に飛び下りた。水は支流のためか青く澄んでおり手にすくうと冷たかった。周りを見渡した3号はマスクを外すと顔を水につけた。
「気持ちいい」
思わず声がでた。

目を覚ました1号は3号がいないのに驚いた。
「パー子?」
ツリーハウスから飛び出した1号は眼下の小川に顔を洗う3号を見つけた。
距離があるためはっきりとはわからないが緑のマントにショートカットの髪、1号が初めて見る3号がそこにいた。
「あっ!!パー子のやつ、マスクを外してる・・」
3号は1号がまだ眠っているものと安心しているのだろう。3号の秘密を知る絶好のチャンスだった。
「パー子に見つからないように、そーっと・・・」
1号は葉っぱに隠れながら近づいていった。一瞬、3号が顔を上げた時、顔が見えそうになったが葉っぱに隠れて頭と口元しか見えなかった。
それだけでも1号の胸は高鳴った。ショートカットにカチューシャそして見なれているはずの唇さえ初めて目にした気分だった。
その時、1号は昨夜の3号の言葉を思い出した。
「私はパー子よ。あなたがよく知っている・・・」
ここで3号の正体をみるのは簡単だった。もう1メートルほど葉っぱに隠れない所まで進むだけでよいのだ。だが、1号はそこから先に進むことができなかった。 ここで一歩を踏み出すと自分の知っている3号ではなくなってしまうような気がしたのだ。
1号は3号に気づかれないようにツリーハウスに戻ると大声をだした。
「オーイ、パー子。どこにいるんだ」
1号の声に3号が戻って来た。
「何処行ってたんだよ。心配したんだぞ」
「顔洗って来たのよ。今起きたの?おねぼうさんね」
3号の笑顔を見た時、1号は大切なものを失わずにすんだ事にホッと胸を撫で下ろした。
「鳥の声がうるさくて起きちゃったよ。さあ、腹ごしらえしたら出発だ」
「そうね」

二人は太陽に向かって飛び立った。
「とにかく、東に進もう。昨日、僕達は西に向って飛んでいて迷ったみたいだから」
「わかったわ」
その時、太陽の中に黒い影が現れ、やがてそれは4号の姿になった。
「いやー、お二人さん、心配しましたで。夕べはどないしたんや?」
「いや・・その、パトロールに夢中になって迷子になったんだ・・ねっ、パー子」
「そ、そうなのよ。1号ったら方向音痴で困っちゃうわ」
「さよか・・・わいは追いかけっこしていて迷子になって朝帰りと思ってましたわ」
言い訳をする二人を横目で見ながら4号はバッジを差し出した。
「ありがとう、どこにあったの?」
「村人が森で捕まえた鳥がくわえとったんや。ちゃんと、お礼言っときや」
「そういえば、ブービーはんの姿が見えんけど、迷子でっか?」
「途中ではぐれちゃったの。ブービーがいてくれたら朝帰りしなくてすんだのに・・」
「1号はんたちだけじゃなくて、ブービーはんもバッジ盗られたんやな。ほんまに光り物が好きな鳥でんな」
「でも、ブービーはんなら心配ないでんな。そのうち帰ってくるやろ」
3人の前に昨日の村が見えて来た。距離からするとツリーハウスからは10キロぐらいだろうか。思ったより近いのに1号と3号は驚いた。そして、今度の捜索が無事おわったらもう一度ツリーハウスに行ってみようと思っていた。

その日の午後、三人のパーマンとガイドは船で川を遡っていた。空から行くのは迷いやすいのもあるが、よそ者嫌いのインディオに空を飛んでいるところを見られない方がいいという4号の考えからだった。
やがて、船はインディオの部落がみえる所までやって来た。
「あれや、ええか、刺激したらあかんで。パーマンパワーは隠しとくんや」
「わかったわね。1号」
「はい・・・なんだよ。パー子こそ気をつけろよ」
「しいっ、声がでかいで」
4号が指を立てたが、四人の目の前に音もなく飛んで来た弓矢が突き刺さった。
しかし、ジャングルには人の気配はなかった。
「これは、威嚇や。いつでもわいらを串刺しにできるという脅しや」
「ひえー」
「このまま、ゆっくり部落に船をつけるんや。急な動きは厳禁やで」
船が近付いて行くと弓矢を構えた男たちが数人現れた。弓矢は確実に四人を狙っていた。
インディオの弓矢にはヤドクガエルの毒が塗ってあり、それが刺さればパーマンといえどもひとたまりもない。上陸した四人は手を挙げると弓矢を背中に感じながら部落の一番奥の建物に連れて行かれた。それは小さな入り口と明かり取りの穴以外は閉ざされた、木で作られた牢やだった。
「あっ、パーマン。助けに来てくれたんですか」
牢やにはすでに、五人の人間が監禁されていた。
「あっ、あなた方はもしかして行方不明の探検隊」
「そうです。よかった、パーマンならこんな牢やなんか一撃ですよね。早くここから出して下さい」
「そうそう、やつらをやっつけて薬草を手に入れなくちゃね。パーマンお願いしますよ」
五人の探検隊員はパーマンたちを急かしたが4号が言った。
「ちょっと待ってな。もう少しようすを見たいよって、もう少しこのまま捕まっていましょ」
「何、言ってるんですか。パーマンは正義の味方でしょ。早く助けて下さいよ」
「そうだ、こんな所はこりごりだ」
五人は口々に捲し立てた。
それを聞いていた4号は無言で1号と3号に目配せするとマスクの翻訳機能を働かせた。
三人の耳にはインディオたちの会話が飛び込んで来た。
「あの四人は何者だろう?一人は現地のガイドみたいだが・・」
「きっと、あの探検隊を助けに来た悪人だ。まとめてワニの餌にしてやろう」
「私たちの大切な森がまたやつらの手で破壊されてしまう。森を守ろう」
「そうだ。そのためには口封じもやむおえない」
「まあ、まて殺生はよくない。悪人であってもな・・」
それを聞いていたパーマンたちにはインディオが森を守りたいだけの純粋な人たちに思えてきた。
「あなた方の雇い主の企業は世界的にも有名な製薬会社ですよね」
「そうです。こんどの薬草が手に入れば我が社は大儲け、いや、世界中の人が製品化されるのを待っているんですよ」
リーダー格の男が言った。
「その薬草は沢山あるんですか?」
「いえ、一本の草木からとれる量はごく僅かです。サンプルを得るためにはかなりの範囲のジャングルを潰さなくてはいけませんね」
「と言うことはインディオの生活はどうなっても構わないんですか?」
1号は探検隊の考えが間違っているような気がしてきた。3号も同じ考えのようで
「ジャングルは彼等の宝ですよ。それを奪うなんて・・・」
と1号の目を見た。
「奪うなんてとんでもない。彼等も多くの富を得ることが出来ますよ。我々を解放すればね」
「そう、あなたたちパーマンだって会社からお礼がでますよ」
「僕達はお金のためにパーマンをやってるんじゃない」
1号が声を荒げるのを4号が押し止めた。
「ちょっと、わいらだけで相談させてもらえませんやろか」
4号は1号と3号を牢やの隅に手招きした。
「どう思います?探検隊の言うてはること・・」
「ぼくはなんか気にいらないなあ」
1号が探検隊を横目でチラッと見た。
「私も好きになれないわ」
「でもな、探検隊の言うことにも一理あるんや。薬を待っている人がいるのは本当や」
「そうだけど、そのためにジャングルを潰すなんて・・・」
「そうよね。でも、私が待っている立場だったら・・」
少し間を置いて4号が言った。
「1号はん、ここはリーダーのあんさんが決断しなあかんでんな。わいらはリーダーに従いますさかい」
「・・・1号」
3号が心配そうに1号を見た。
1号はしばらくだまっていたが探検隊を振り返ると言った。 
「分かりました。じゃ、とにかくここから出ましょうか」
「1号!!」
3号と4号の驚きをよそに1号は牢やの入り口を押し広げると時速119キロで飛び出して行った。
「さすが、1号はちがうな。3号と4号も早くやつらをやっつけて下さいよ」
1号に続いて探検隊も外に飛び出して行った。
弓矢を構えたインディオが飛び出して来たが次の瞬間1号は弓矢を奪い取っていた。
探検隊は拍手しながらインディオに罵声を浴びせた。
3号と4号もインディオから弓矢を取り上げた。
「このやろー、今までのお返しだ」
呆気にとられているインディオに飛びかかろうとした探検隊の一人が何かにつまずいて転んだ。
「いたた、何するんだ。パーマン1号」
どうも、1号が足を出したらしいが、本人は涼しい顔で言った。
「あっ、失礼。足が長いもんで・・・」
1号はインディオに何事か話すと振り返った。
「さて、探検隊の皆さんを牢やから助け出しました。つぎはインディオの皆さんを助ける番です」
「なんだと、パーマンは正義の味方だろ。なぜやつらを助ける?」
リーダー格の男が言った。
「確かに薬草は多くの人が待っているかもしれません。でも、薬草を育んだジャングルとともに彼等は生きてきました。薬草をどうするかは彼等が決めることだと思います。あなたがたのように無理矢理に奪っていくのは間違っているんじゃないでしょうか」
1号はの言葉は力強かった。3号は笑顔でインディオに1号の言葉を通訳した。インディオは最初、戸惑いの表情だったがパーマンたちがジャングルを守りたい自分たちの事を理解してくれているのが分かったようだった。
「今回は探検隊の捜索が任務や。これで一件落着やな」
「何言ってるんだ。ただで済むと思うなよ、パーマン」
「マスコミに今度のことをぶちまけてやるからな」
探検隊は捨て台詞を残すと留めてあった船に飛び乗り川を下って行った。
「ふー、よかったわね。皆さん」
3号はインディオの子供と手を繋いでいた。
「でも、また強引な手段でやってこないかしら」
「大丈夫や。企業のやり方には前から反論があったんや。近いうちに厳しい制限ができるはずや。ジャングルはインディオやそこに住む生き物のものや。薬草が必要ならよく話し合うことが必要でんな」
「でも、1号はん。よう言ってくれはった・・・あれ、どないしたん?」
1号は地面に大の字になっていた。
「どうしたの?1号」
駆け寄った3号を1号は見上げて言った。
「いや、緊張しちゃって・・でも、昨日ジャングルで一晩過ごしたことがいい経験になったよ。ツリーハウスや食べ物、どれもジャングルが与えてくれたんだもんな」
「そうね。私も素敵な体験だと思うわ」
「さあ、わいらも帰りましょか。ガイドはんお願いしますわ」
4人の乗った船はインディオの部落から川を下り出した。川辺では大勢のインディオが笑顔で手を振ってくれていた。
手を振りかえす1号に3号が囁いた。
「カッコよかったわよ。惚れ直しちゃった・・・なんてね」
1号は聞こえないふりをして手を一段と大きく振った。

「みんなにも、迷惑をかけちゃうね。きっとあいつらマスコミにいろいろ言うよ」
1号は少し心配そうだった。
「平気よ。あなたの判断は正しかったと思うわ。ねっ、パーやん」
「そうや、さすがはわいらのリーダーや」
「でも、牢やから飛び出して行ったときはどうなるかと思ったわ」
「そやな、1号はん。お金に目がくらんだかと心配したで」
「パーやんと一緒にするなよ」
「でも、ちゃんと考えていたのね。素敵だったわよね」
「そやそや、見直したで1号はん」
1号の顔が赤くなったのがマスクをしていてもわかった。
「あっ、1号、照れてる。めったにほめられないものね」
「何だと、パー子」
しばらく、二人の言い争いを聞いていた4号が思い出したように言った。
「そういえば、わいら、何か忘れてるような・・・」
しばらくして三人は声を合わせて行った。
「ブービー!!」

そのころ、1号と3号が作ったツリーハウスにはかわいいお猿さんと果物に囲まれた猿の王様の姿があった。
「ウイー、ウイー、ウキャキャキャ」


「ツリーハウス」  完

©アルペジオ