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| ■ 2人のパー子 |
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日本晴れの午後、みつ夫、かば夫、さぶ、みち子の4人はおしゃべりをしながら下校中だった。 話題の1つは<星野スミレに恋人?>の芸能ニュースである。 歌謡番組のインタビューで星野スミレが好きな人がいると爆弾発言したのだ。 「スミレちゃんに好きな人がいるなんて、私知らなかったわ」 みち子が夢見心地にいった。 「そんなこと、昨日までだれも知りませんよ。ねえ、かば夫くん」 「当たり前だ。ファン代表のオレが知らないなんてありえないぜ」 「なんで、かば夫くんがファン代表なの。それこそ、ぼくは知らなかったよ」 「なんだと、みつ夫」 かば夫が殴りかかろうとするのをみち子が止めながら言った。 「スミレちゃんの好きな人って同じ芸能人やスポーツ選手と思っていたのに、どちらでもない普通の男の子って言ってたわよね」 「そうそう、勉強も運動も苦手って言ってましたよね」 「何よりも不思議なのは、相手の男の子がスミレちゃんが好きだって知らない事よね」 「いったい、何処のどいつなんだ?その幸せ者は・・・」 「でも、スミレちゃんもかわいそうだね。好きな人に相手にされないなんて」 「何言うの、みつ夫さん。美少女の片思いってロマンチックじゃない。スミレちゃんはああ言ってるけど、きっと素敵な人よ。私の大好きなパーマンみたいな人じゃないかしら」 「えっ、そんな、こまっちゃうな〜。スミレちゃんとみっちゃんがぼくを〜」 舞い上がるみつ夫はみち子の一言で墜落した。 「相手がみつ夫さんということだけは絶対ないわね」 「ワッハハ、まだ、おれたちの方が可能性高いもんな。さぶ」 「かば夫君の言う通り」 「いやーだ。2人して」 地面に墜落したままみつ夫は思った。 (ドクトル・オクト事件の時、スミレちゃんとぼくは2人っきりだった。本当なら男のぼくが元気づけてあげなくちゃいけなかったのに、逆にぼくがパーマンだってことを教えてくれた・・あの後、頑張れたのもスミレちゃんのおかげだし・・・・可愛いだけじゃなくて、しっかり自分の夢ももってるし・・・たくさんの人に夢や希望を伝えたい・・・そんな、スミレちゃんが好きになる男の子っていったいどんなやつなんだろ?) 「オーイ、みつ夫。何してんだよー。先に帰るぞ」 かば夫の声に我に返ったみつ夫は3人の所へ走って行った。 「みつ夫さん、そういえば千面相のニュース知ってる?」 「知ってるよ。千面相がまた予告状をマスコミに送りつけて来たんだよね」 そして、もう1つは<怪盗千面相の予告状>のニュースだった。 千面相が今晩22時から0時の間に科学博物館から<ジュラ紀の涙>を頂戴すると予告して来たのだ。 ジュラ紀の涙とは世界に一つしかない涙形の青い琥珀で貴重な恐竜時代の遺産だった。 「千面相、この前はパーマンの活躍で予告通りにいかなかったんですよね」 「でも、あのパーマンでも捕まえれないんだからすごい怪盗だよな」 千面相は変装の名人であるだけでなく魔術師のようでもある。ひと月ほど前、千面相を追いつめたパーマンたちだったが一緒に居た警察官が催眠術にかけられ突然暴れ出してしまった。その隙に千面相は警察官のなかに紛れ込み、そのまま逃げられてしまったのだ。 「こんどは、千面相がパーマンを名指しで指名してきたらしいぜ。パーマンは受けてたつのかな?」 「当然だよ」 みつ夫は力強く言った・・はずだったが・・ 「おまえじゃなくて、パーマンだよ。パーマンに頑張れって伝えといてくれよな」 「お願いね、みつ夫さん。パーマンに私が応援してるって言ってね」 「うん、わかったよ・・・・」 3人と別れたみつ夫は急いで家に帰るとコピーロボットのボタンを押した。 「でかけるの?」 とぼけた声でコピーが言った。 「今晩は千面相と僕達パーマンの1対4の対決だ。博物館の中には警察や警備の人は入れないんだよ。」 「千面相がそういう条件をだしてきたんでしょ、大丈夫?」 コピーが心配そうな言い方をしたので、みつ夫は大声で言った。 「ジュラ紀の涙は渡さない。今日こそ決着をつけてやる」 その時、階段をあがってくる足音が聞こえた。 「みつ夫さん。なに1人で騒いでるの?ちょっと、お話があります」 「ママだ。後は頼んだよ」 みつ夫はパー着するとベランダから飛び出して行った。 「もー、叱られるのはまたぼくだ」 コピーが不満を言うと同時にママとガン子がドアを開けて入って来た。 「みつ夫さん、あなた今日道路に寝そべっていたそうね。ガン子ちゃんから聞きましたよ」 「私、見ちゃったもーん」 「えっ、そんなこと・・・ぼくじゃないよ」 「うそよ。絶対お兄ちゃんだったもん」 ガン子がママの後ろに隠れながら言った。 「みつ夫くんだな〜」 「何言ってるの。自分のことでしょ。言い訳は嫌いです」 「ごめんなさい」 いつものように損な役回りのコピーであった。 博物館の上空でパーマンたちは今晩の相談をしていた。 「それにしても、わいらと1対4で勝負したいなんて、大胆やな千面相は・・」 「そうね、どんな手を使ってくるのかしら?」 「ウイーウッキイー」 「地面から穴を掘ってくるとか」 1号が自信ありげに言った。 「それはないでんな。今日、警察に下水道とか調べてもろたんや。怪しい痕跡はなかったそうや」 「じゃあ、警察官に変装してくるとか」 「おそらく、博物館に入るまではそうやろな。周囲は警察官だらけや。かえって目立たんしな」 そんな4人を遠くから望遠鏡で覗く怪しく光る目があった。 (フッフッフッ、我輩の予告した22時まで、まだ時間があるのにご苦労な事だ) 望遠鏡を覗いていた男はダンディな黒のスーツ姿で胸につけた一輪の赤いバラが印象的だった。 道路の反対側で偶然、男を見たデート中のカップルは我が目を疑った。 歩いていた男が街路樹に隠れた次の瞬間、男の姿は消え代わりに1人の老婆が現れたのだ。 老婆は男よりかなり小柄でつえをつきながらヨロヨロと歩いていたが次の街路樹から現れたのはセーラー服姿の女子高生だった。女子高生はカップルに手を振ると微笑んだ。だが、2人がまばたきする間にその姿は消えてしまったのだ。 ジュラ紀の涙は特別展示室のガラスケースの中に展示してあった。 展示室には他に復元された恐竜の骨格標本が多数、展示してあり、出入り口は1つ、吹き抜けの天井にある窓から夜空を見る事が出来た。 「みんな、ええか。今、この博物館の中に居るのはわいらと千面相だけや」 「千面相は館内にいるのかしら?」 「いるやろな。でも、千面相は約束は守る男や、予告時間までは何も行動を起こさへんやろな」 「いったい何処に潜んでいるんだ」 「ウッキーキー」 「どんな手を使ってくるかわからんよって、ここに入ってくるもんはネコでも疑わないかんで」 そして、22時を告げる時報と同時に千面相の声が館内に響いた。 「さあ、始めようか」 しばらくの沈黙の後、展示室の入り口から1人の老婆が入って来た。 「おばあさん、どうしたんですか?」 1号が声をかけた。 「息子の家を訪ねて来たんですが道に迷ってしまいました」 「そりゃあ、大変ですね。ぼくが送っていきましょうか、千面相」 「なっ、なぜわかった。パーマン1号」 老婆が男の声でいった。 「普通、道に迷ったら交番に行くもんだ。博物館に来るなんて不自然だよ」 「ちがうでしょ、1号。おばあさんがいること自体が不自然なのよ」 「おのれ、さすがはパーマン」 老婆が着物を脱ぎ捨てると黒い服に身を包んだ千面相が現れた。 「久しぶりだな、諸君。時間はまだたっぷりある。これからがおもしろくなるのだよ。フッハハハハ」 千面相は後ろにゆっくり下がると廊下に消えた。 「まてー」 「まちなさい」 1号と3号が廊下に飛び出して行った。 「待つんや。ブービーはん」 2人に続こうとした2号を4号が止めた。 「わざと目立つ行動をとったのはわいらを誘い出すためや。1号はんとパー子はんにまかせて、わいらはここを守りましょ。そや、バッジで連絡しとかんと」 その時、妨害電波のため、バッジで連絡がとれなくなっていた。 千面相は1号と3号から身を隠し妨害電波装置のスイッチを入れた。 「さすが、パーマン4号だな。だが、これも作戦のうちだ。単純な1号が追いかけてくるのはわかっていた事だ。3号が一緒にくることもね」 「逃げられた。逃げ足が早いなあ」 1号が展示室に戻って来た。 「私も見つけられなかったわ。どこに隠れたのかしら」 一足先に戻っていた3号が言った。 「ここにジュラ紀の涙がある限り、千面相はここに必ず現れるで。外に誘い出されたら思うつぼや」 「確かに、そうだ」 「私も、つい追いかけちゃった。なぜかバッジで連絡もとれなかったし。でも、もうここから動かないわよ」 そう言って3号がブラウスの袖をまくり上げた時、展示室に飛び込んできた人物がいた。 「えーっ」 4人は声をそろえて驚いた。 「怪しい影がこっちに向っていたわ。千面相じゃないかしら」 それは、もう1人のパーマン3号であった。 「パッ、パー子が2人?」 「いやだー。私がいる〜」 「こっちこそいやよ。あなた誰よ?」 「わたしはパー子よ。あなたこそ誰よ?」 「わたしがパー子よ。ねえ、みんなわかるでしょ。私が本物って」 「どちらかが千面相だと思うけど・・でも・・・わかんないよ」 「わいもわからん」 「ウキー」 「2人とも飛びながらここに戻ってきよったしな」 「飛べると言う事は2人ともパー子?」 「何言ってんのよ、1号」 「そうよ、何言ってんのよ。私がパー子。こっちは千面相よ」 4号が1号に小声で囁いた。 「それにしても、そっくりでんな。あらためて千面相のすごさが分かりましたわ」 「ほんと。双子みたいだよね」 「ちょっと。あなたたち何コソコソ話てるの」 「そうよ。もっと真剣に見てよ。ヒゲの千面相が私みたいな美少女に変装できるはずないわ」 「こうなったら6600倍の力で」 3号がもう1人の自分をにらんだ。 「そうね。それが一番いいわ」 2人の3号が宙に浮き上がった。そして飛びかかろうとしたとき時、4号がさけんだ。 「あかん。ここは狭すぎるで。ここで暴れたら貴重な標本がバラバラや」 「じゃあ、どうすればいいのよ」 「そうよ、そうよ」 宙に浮いた2人を1号はじっと見ていたが・・ 「よし、今から問題を出す。2人とも降りてくるんだ」 「わかったわ」 「いいわよ」 2人は床に降り立ったが、それを見ていた1号が言った。 「今、君たちの片方はスカートを押さえながら降りて来た。でももう1人は押さえてなかった」 「私はレディよ。スカートを押さえないなんて、あなたが千面相よ」 「事件のとき、そんなこと気にしてられないわ。あなたこそ千面相よ」 「どや、1号はん。わかりまっか」 「うーん。どっちもパー子が言いそうな事だ。わかりまへん」 「ウッキキー、キーキー」 「じゃあ、質問その1。パーマンの使命は?」 「世界の平和を守ること」 2人の3号が声をそろえて言った。 「質問その2。パーやんの好きな食べ物は?」 「たこ焼きよ。関西人だもの」 「たこ焼きよね。焼くのも上手よ」 「うーん。どっちも正解だ」 「質問その3。君たちはぼくの事どう思ってる?」 「パーマンのリーダーよ。少し頼りないけどやる時はやるわよね」 「正義の心は誰にも負けないわ。でもおっちょこちょいね」 「ヘコー。ぼくって頼りなくておっちょこちょい?」 「2人とも、完璧な答えでんな」 「ウイーウイー」 「こうなったらマスクをとるんだ」 1号が2人の3号を指差しながら言った。 「えーっ、それだけは許して」 1人の3号がマスクを押さえて後ずさりした。 「君はどうなんだ」 もう1人の3号はしばらく下を見ていたが決心したようだった。 「・・・・・わかったわ。私が本物であることを証明するためにマスクを外すわ」 「いや・・・やめて。お願い」 「あなたが本物ならマスクを外せるはずよ」 そう言いながら、3号はマスクに手をかけた。 「ついにこの時がやって来たんだ」 「パー子はん、どんな顔やろ」 「キャキャーウキー」 もう1人の3号はマスクを押さえたまま言った。 「私の正体は秘密なのよ」 「そう私の正体は秘密よ。でも、今が正体を明かす時なの」 3号はゆっくりとマスクを外しながら言った。 「いままで、隠していてごめんなさい。でも、こうするよりなかったの」 1号、2号、4号はその顔を見て思わず声がでてしまった。 「スミレちゃん!!」 マスクを外した3号はにこやかに微笑んだ。 「名前を言っちゃ駄目よ。千面相に聴かれちゃったわ」 3人の目の前に緑のマントと赤いマスクをかかえた星野スミレが立っていた。 目がハートになってしまった3人は状況をすっかり忘れていた。 「パー子がスミレちゃんだったなんて」 「ほんまや。そういえばどこかパー子はん・・普通の女の子じゃないと思っとったんや」 「ウイーウイー」 マスクを押さえていた3号はもう1人の3号がマスクを外した時からしゃがみ込んでしまっていた。 「なぜ、あなたがスミレなの。なぜパー子なの」 3号は涙声で言った。 「私はパー子、そして星野スミレよ。あなたはだれ。マスクを外しなさい」 そう言うとスミレは3号に近づいて行った。そして、その手が赤いマスクにかかろうとした時、1号が言った。 「パー子、いやスミレちゃん。ここで正体を明かした勇気。君が本物だよ」 「わかってくれてありがとう、1号」 スミレはとびっきりの笑顔を返した。 「1つ、スミレちゃんに質問してもいいかな。ファンの1人として・・」 「いいわよ」 「スミレちゃんの夢ってなんなの?」 「夢?、立派な女優になることよ。ファンなら誰でも知ってる事よ」 「それだけ?」 「それだけって・・そう、それから世界で通用する女優になりたいわ。そのために私がんばってるのよ」 「そうでんな。スミレちゃんなら世界一の女優になれるやろな」 「ここでマスクを外す勇気、本物でんな。」 「うん。ぼくもわかったよ。どちらが本物のパー子か・・・」 1号はしゃがみ込んだ3号に近づくといった。 「さあ、立つんだ。」 「1号・・・・」 3号は諦めた様に立ち上がった。 「1号、千面相を逃がさないでね。よかったジュラ紀の涙が無事で」 そう言いながらスミレはガラスケースを覗き込んだ。 それを見た1号はスミレに飛びかかった。 「なにすんねん。1号はん」 「ウキー」 「やめてよ、1号」 「早く縛り上げるんだ」 後ろから羽交い締めにしながら1号が言った。 「何言うの1号。私は本物のスミレよ」 その時、もがくスミレの手から青い物体がこぼれ落ちた。 「これはジュラ紀の涙や。なんちゅう早業や。という事はスミレちゃんが千面相!!」 その時、1号の腕から人の感触が消えた。そして、背中に小型のジェット装置をつけた千面相が宙に浮いていた。 「あの装置で飛んでいたんや」 「我輩のジェット装置は特製だ。音も静かで燃費もいい・・・フッハハハハ」 1号の腕にはスミレの抜け殻だけが残っていた。 「千面相、なぜスミレちゃんに変装したんだ」 「私の好敵手、パーマン1号が星野スミレの大ファンと知って軽いジョークだよ。次はだれがいい?フッハハハハ・・・ワッ、やめろ〜」 「パー子」 3号が千面相に飛びかかった。 「よくも、私に変装したわね。それにスミレちゃんにまで」 一瞬、千面相の方が動きが速かったが、3号の手も千面相の足をつかんでいた。 「はなせ。はなすんだ」 「はなさないわよ。おとなしく捕まりなさい」 <ビリーッ> 大きな音とともに千面相のズボンがやぶれシマシマのトランクスがあらわれた。 「ヒエーッ、みっともない。今回は私の負けだ。次こそは・・・」 千面相は天窓を突き破ると外に飛び出した。 「待てー」 4人も千面相を追ったが暗闇の中にその姿は消えていた。 「また、逃げられた」 「でも、よかったでんな。ジュラ紀の涙が無事で」 「ウイーウイー」 「パー子、大丈夫か」 1号が言った。 「あなたがマスクを外せって言った時は驚いたわ」 「でも、1号はん。なんで千面相の変装を見破れたんや」 「そう、私もそれを訊きたいわ」 「スミレちゃんの夢だよ。スミレちゃんはぼくに夢を語ってくれたんだ」 「語るって、オクト事件の時かいな?」 「ナイショー」 「おしえてな1号はん」 「スミレちゃんとぼくだけの秘密だもん」 「2人だけの秘密って・・まってな1号はん」 そんな1号と4号を見ながら3号はつぶやいた。 「よかった」 「ほなら、わいはここで失礼しますわ。明日の朝早いよって」 「おつかれ1号はん、ブービーはん、パー子はん」 4号は西の空に向って遠ざかって行った。 「バイバイ、パーやん」 「またね」 「ウッキキー」 残された3人は4号が暗闇に見えなくなるまで見送っていたが、少しして2号が言った。 「キッキー、ウキャー」 「えっ、自分も明日は早いから帰るって」 「ウイーウイー」 「わかったよ。みんな朝早くから何やってんだい?」 「何言ってんのよ、1号。あなたみたいな朝寝坊さんはいないわよ」 「たしかに、パーマン活動の次の日は学校に遅刻しちゃうんだよな」 ここのところ、パーマン活動が忙しかったため睡眠不足な1号だったが、短時間でも熟睡できる3号は遅刻とは無縁であった。 「じゃ、おやすみブービー」 「おつかれさま。次こそ千面相を捕まえましょうね」 「ウッキッキー」 2号は空中で2回転すると夜空に見えなくなった。 「じゃ、ぼくも明日早いから帰ろっと」 1号が飛び去ろうとすると3号がマントを引っ張った。 「なんだよ、パー子。今日はぼくも早く寝たいんだよ。それにお腹すいたし・・」 「1号、1つ質問していい?」 3号が1号の目を見ながら言った。 「質問?、いいけど飛びながら話そっか」 「いいわよ」 2人は夜景を眼下にゆっくりと1号の家の方へ進路をとった。途中までは3号も同じコースである。 「質問ってなんだよ?」 1号が少し不機嫌そうに訊いた。 「あのね。もしもよ、もしも私が本当にスミレちゃんだったらどう思う?」 「へっ?ウヒャヒャヒャヒャ。突然なにを言い出すんだよ。ぺこぺこのお腹と背中がくっついちゃうよ」 1号がお腹をかかえて笑い出したので3号はムッとしながら言った。 「もしもよ、もしも」 「いやー。でも、今日はびっくりしたなあ。スミレちゃんの顔があらわれた時は目が点になったよ」 1号はあの時、どれだけ自分が驚いたかを再現したが、自分以上に驚いた人物がいたことには気づいていなかった。 「私だっておどろいたわよ。まさか千面相がマスクの下でスミレちゃんに変装しているなんて」 「千面相は君のことを観察していたんだな。それで、君がスミレちゃんと親友ということを知ったんだよ」 「私もそう思うわ。千面相は変装する人物をじっくり研究するっていうものねえ」 3号は最初、千面相が自分の正体に気が付いたかと心配したが、千面相本人の言う通り彼流のジョークだったようだ。 「で、なんだっけ質問?」 「そうそう、わたしがスミレちゃんだったらよ」 「ウヒャ・・あり得ない話だけど、もしそうならこんな危険なパーマン活動はさせられないよ」 笑いを堪えながらながら一号が言った。 「スミレちゃんのきれいな手に傷でもついたら大変だ。スミレちゃんがパー子じゃなくてよかった」 「なによ、本当に私、スミレちゃんかもしれないのよ」 「ウヒャヒャヒャ、お転婆でおしゃべりな君がスミレちゃん?・・ウヒャヒャヒャ」 「なによー」 大笑いする1号を捕まえた3号は思った。 (今日の千面相みたいにマスクをみつ夫さんの前で外すときがくるのかしら?) 今、自分の正体を明かせばパーマン活動に大きな支障がでるのは目に見えている。それに、こうして1号にヘッドロックすることも出来なくなる。 (スミレちゃんがこんな事するはずがない。おまえは千面相だな) (スミレちゃんに絞められるなんて幸せ・・・) 1号が言いそうな事を想像した3号の腕に力がはいった。 「くっ、苦しい〜。パー子」 手足をばたつかせながら1号が言った。 「あっ、ごめんなさい。つい力が入っちゃって・・」 「ふー、死ぬかと思った。このお転婆」 「お転婆ですって!!」 「そうだよ。世界一、いや宇宙一のお転婆だよ」 「キーッ、待ちなさい1号」 逃げる1号を追いかけながら3号はある日のコピーとの会話を思い出していた。 ドクトル・オクト事件の後のことだった。 「コピー、どうしよう。パーやんに私が1号を好きってばれちゃった」 「いいじゃない。いずれは分かる事だから・・スミレちゃん、パー子の時は顔にでるのよね」 「好きやろって言われた時、私、トマトかリンゴみたいな顔してたと思う」 スミレの顔はあの時のパー子に負けないくらい赤くなった。 「うふ、今のスミレちゃん、すごく可愛いわ。みつ夫さんに見せてあげられなくて残念ね」 「もう、なんて事言うのよ」 ふくれるスミレにコピーは顔を覗き込むと言った。 「スミレちゃん、1号の前でも今みたいに素直になればいいのに・・・」 「コピーこそ、1号とケンカしたでしょ」 「それは、あなたのコピーだからよ。でもパー子になるとなぜ素直になれないのかしら?」 「それがわかれば苦労しないわ」 小さくスミレはため息をついた。この話題で今まで何度ため息をついたことだろう。 「あなたは名前は知らなくてもみつ夫さんの顔は知ってるんだから一度デートしたら」 突然のコピーの一言にスミレは驚いた。 「パー子さんに仲立ちしてもらうのもいいわね」 コピーが他人行儀に言った。 「でも、そうするとパー子としての私が・・・」 「みつ夫さんのほうからお誘いがあるかもね」 「1号から誘われたらどうしよう」 「あっ、そうだ」 急に立ち止まった1号に3号はまともにぶつかってしまった。 「急に止まらないでよ。あぶないでしょ」 「ごめん、パー子。お願いがあるんだ」 「なによ」 「スミレちゃんと連絡とれるよね。1つ伝言たのみたいんだ」 (きた!!) (きっと、デートの誘いだわ。どうしよう) 下を向いてモジモジしている3号だったが1号の伝言は意外なものだった。 「今日、千面相の変装を見破れたのはスミレちゃんのおかげなんだ。それに、2人で捕まった時、自分が落ち込むばかりでスミレちゃんの夢にぼくは何も言えなかった・・・夢を僕に語ってくれたスミレちゃんに<夢に向って頑張って>って伝えてほしいんだ。たのむよ」 「それだけ?」 「そう、それだけ。何か他に言う事あったっけ・・・あっ、サインくださいかな」 拍子抜けした3号だったが、とてもうれしい伝言だった。 「それから、もう一つ。これは君に言いたいんだけど・・」 「なによ」 「君の正体、すごく知りたいけど、君が自分から明かしてくれるのを待つよ」 「ありがとう、1号」 「何なら、今でもいいけど・・」 「・・・もう、だめだめ、絶対だめ」 「いいだろ、パーやんたちには言わないからさ」 「だめ」 「たのむよ」 「待つって言ったでしょ」 「言ったけど・・」 「わかったわ。ゆびきりしましょ」 「なんで?」 「いいから、指切りげんまん・・・・・・」 2人はゆびきりをして帰路についたが後から1号は思った。 (こういう時ってゆびきりをするんだっけ?それに、パー子とのゆびきり前にもしたような・・・・) そのころ、星野スミレは鏡とにらめっこをしていた。 「うーん。このワンピースもかわいいわ。でも、やっぱりこっちのピンクのほうがいいかしら」 それから色々とポーズをとってみた。 「どこから見ても星野スミレよね・・・・・なぜ、パーマン1号に私の完璧な変装が見破れたのかしら?」 スミレの声は途中から低い男の声になっていた。 男は変装マスクをとりワンピースのままターンをきめるとポーズをとった。 「我輩もアイドルについてもっと勉強しなくてはいかんな」 『2人のパー子』 完 |
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